今回は、中曽根陽子著『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』をご紹介します。
本書のテーマは、子どもが「自分の好きなこと・自分のやりたいこと」を見つけて幸せに生きていく上で重要な「探究力」です。
この作品は「探究力」を育てるために家庭でできることや親としての心構えを教えてくれる本です。
著者は、教育ジャーナリストであり、親自身の探究力アップのために「マザークエスト」というメンバー制のコミュニティーを運営しています。
この記事では、「そもそも探究心がなぜ大事なのか」「著者が提唱する、焦らない・決めつけない・コントロールしない子育て」について解説していきます。
- 子どもの可能性の伸ばし方を知りたい
- 我が子には自分の好きなことで幸せに生きてほしい
- 親である自分自身の「好きなこと」「やりたいこと」がわからない
という方におすすめの一冊です。
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「探究力」は、なぜ大事?
この本では、「探究力」の重要性が繰り返し述べられています。
ご存じの通り、私たちが生きている社会はものすごい勢いで変化しています。
今までは、世間的によいとされるレールに乗ってさえいれば、ある程度は安心できる「正解」のある時代でした。
しかし、現代では有名大学を卒業して、有名企業に就職することが、必ずしも「正解」ではなくなっています。
テクノロジーの発展で「将来、今ある仕事の約半分がAIやロボットによって奪われる」といったニュースもずいぶん話題になりましたよね。
これからは、今以上に働き方や価値観も多様化していくことでしょう。
そんな時代を子ども達が幸せに生きていくためには、自分にとっての正解を見つけられる力が必要だと著者は言います。
- 自分は何が好きで、何が得意で、何がしたいのか。
- どういう風に生きていきたいのか。
いわゆる「自分軸」がしっかりしていることが大事なのです。
「これからは、自分の好きなこと、得意なこと、やりたいことを見つけられ、それが実現できる人は幸せに生きられる。そういう大人になるために、家庭で探求力を育てよう」 これがこの本で私が最も伝えたいことです
中曽根陽子著『成功する子は「やりたいこと」を見つけてる』株式会社 青春出版 (2021年)
この「やりたいこと」は、多くの場合そう簡単には見つかりません。それを見つけるために必要なのが本書のテーマでもある「探求力」です。
著者は「探求力」を“自ら問いを立てて考えて行動し、自分なりの答えを見つけていく力”であるとしています。
2万人の日本人を対象とした調査では、所得や学歴よりも「自己決定」、つまり大事なことを自分で決めたか否かが幸福を左右する大きな要因だと分かりました。
当然ながら「自己決定」するためには、自分自身のことをよく分かっている必要がありますよね。
親が先回りして何でもやってあげたり、子どもの気持ちを無視して指示や命令を繰り返していては、子ども自身が「自分は何をしたいのか」「自分は何が好きなのか」を考えたり、感じたりする機会を奪ってしまいます。
子どもが小さな内から探究力を発揮し「自分軸」を育てるサポートをすることは、幸せな人生を歩む手助けすることです。
「探究力」のある子の家庭の共通点
著者は、やりたいことを見つけて活躍する子の家庭には大きく3つの共通点があるといいます。
- やりたいことは、とことんやらせる
- 子どもに多くの習い事をさせていない
- 子どものことを否定せず見守る
「1」と「3」に関してはなんとなく理解できますが、「2、子どもに多くの習い事をさせていない」は少し意外な感じがしました。
しかし、多くの方を取材してきた著者曰く、自分の好きなことを見つけて活躍している方は、幼少期によく遊び、詰め込まれていない人が多いのだそうです。
「もっと知りたい」「もっとやってみたい」と思うためには、適度に暇な時間、いわば「余白」が必要です。
習い事が多すぎては、スケジュールをこなすだけで精一杯になってしまい、この「余白」の時間を持つことができません。
防犯上の理由で放課後に習い事をさせざるを得ない場合もあると思いますが、「余白」が極端に少なく、子どもが疲れきっている場合には、どれを優先するのか一度考えてみてもいいかもしれません。
また、「親に自分がやろうとしていることを否定されなかった」というのも重要な共通点のひとつです。
「好きなこと」や「やりたいこと」を見つけて探究していく過程では、失敗や挫折が付きものです。
ですが、親御さん達はそんな失敗も含めて、その子のありのままを受け入れていました。
- 自分のやりたいことを親が尊重してくれる
- 自分のありのままを愛してくれる
と思えれば、子どもは安心してチャレンジすることができますよね。
子どもの探究心の育て方
焦らない
「やりたいこと」を見つけられる子に育てるために大切な1目のポイントは、「焦らない」ことです。
「やりたいこと」が見つかっても、元気な「からだ」・「あたま」・「こころ」がないとそれを実現することはできません。
著者は子どもの「やりたいこと」を実現するための土台を育む方法を「焦らない子育て」として紹介しています。
ここでの肝は「脳」を育てることです。
これは、いわゆる「知育」ではなく、脳の仕組みを知って、順番を守った育て方をするということです。
脳には、こころ・あたま・からだを司る部分があり、大まかに「からだの脳(0~5歳)→あたまの脳(1~18歳)→こころの脳(10歳以降)」の順に発達のピークを迎えます。
しかし、土台である「からだの脳」がしっかりと育たないうちに「あたまの脳」ばかり刺激してしまうと、バランスを崩し、その結果「こころの脳」の発達にも悪影響が出て、ちょっとしたことで不安定になったり、キレやすくなったりするのです。
「からだの脳」は主に幼児期に育ち、「寝る・食べる・身体を動かす」といった基本的な生活習慣の影響を大きく受けます。
この時期に詰め込み型の早期教育を行ったり、忙しすぎるスケジュールで睡眠時間が十分に確保できなかったりすることで、発達に問題が出てくるケースがあります。
じょうぶな脳を育てるのに重要な役割をするのが、「良質な睡眠」と「地球のリズムに合わせた生活習慣」です。 「早寝・早起き・朝ごはん」。「基本的にこれが守られていれば、子どもはちゃんと育つ!」と、成田先生も太鼓判を押しています。
中曽根陽子著『成功する子は「やりたいこと」を見つけてる』株式会社 青春出版 (2021年)
※成田先生:成田奈緒子先生 発達脳科学者・小児科医
睡眠には身体や脳を休ませるだけではなく、情報を整理したり、記憶を定着させたりする働きもあるので「学習」という面からみてもとても重要です。
また、睡眠と同じくらい大事なことは、「運動をすること」です。
運動と脳の発達は一見関係がなさそうですが、脳の発達にはリズミカルな運動が効果的ということが分かっています。
特に、ゴールデンエイジと呼ばれる 6歳から12歳の頃は運動神経が著しく発達するときなので、この時期に運動を通してできるだけ様々な動きを体験するのがよいそうです。
「やりたいこと」を実現していくためには体力も大事ですが、こちらも運動によって向上させることができますから、一石二鳥ですね。
決めつけない
「やりたいこと」を見つけられる子に育てるために大切な2つ目のポイントは、子どもを「決めつけない」ことです。
私たち親は、子どもの可能性を広げてあげたいと心から願いながらも、子どもの行動を制限したり、理想の子供像を無意識に押し付けたりしがちではないでしょうか?
変化が激しく先の見えない時代、「親世代の価値観や思い込み」で子どもの行く末を決めつけることは、子どもにとって大きなマイナスです。
子供のやりたい気持ちや自主性を摘んでしまうことにもなりかねません。
まずは身近な「遊び」から、遊び方を親の価値観で限定せずに、子どもの自由にさせてみます。子どもの成長にとって自由に遊ぶことはとても大切な時間です。
自由に遊ぶ中で子どもは想像力を働かせますし、新しいことにチャレンジしたり、失敗したりして何度も挑戦するへこたれない力を育みます。
つい口出しをしたくなってしまいますが、何事も最初から禁止をせず、やらせてみて危なかったらやり方を示すくらいの関わりがちょうどよいかもしれません。
時には大人の目からみて「なにが楽しいのだろう?」と思えてしまうようなことでも、子どもが集中して取り組んでいたら、それを妨げないようにします。
著者は、YouTube やゲームも「悪いもの」と決めつけて頭ごなしに禁止せずに、上手に使いこなすことを勧めています。依存には確かに注意するべきですが、それよりより怖いのは学ぶ機会を奪うことです。
コントロールしない
「やりたいこと」を見つけられる子に育てるために大切な3つ目のポイントは、子どもを「コントロールしない」ことです。
こちらに関しても、良かれと思ってつい子どもをコントロールするような声掛けや態度をとりがちではないでしょうか?
大切なのは大人が子どもをコントロールすることではなく、「子どもが自分で自分をコントロールする力」をつけることです。
そのために、親は何ができるでしょうか?
被験者の子どもを、幼児期から児童期まで7年間にわたって追跡調査した研究では、幼児時期に「頑張る力」が高い子程、小学校低学年(1~3年生)で大人に言われなくても自分から進んで勉強し、「頑張る力」も高いことがわかりました。
そして、それらに影響を与えているのは、「子どもの意欲を大切にする態度」や「子どもが自分で考えられるように働きかける」といった親の関わり方でした。
具体的には、「早く!早く!」と急かさないこと、子どもが何かに集中していて、親の声も耳に入らないようなときに頭ごなしに叱らないことなどが挙げられています。
- 宿題をいつやるかを子どもに決めさせるようにしたら、自分からやるようになった
- 食が細く、食べるのが遅い子が、たまたま早く食べられた時に褒めてあげたら、しっかり食べられる日が増えてきた
といった事例も載っていました。
アメリカの心理学者キャロル・S・ドウェック教授は、様々な分野で大きな成功を収める人は、「自分の才能や能力は、経験や努力によって向上させることができる」というマインドセットを持っていることをつきとめました。
一方で、伸び悩む人は「努力によって能力は変わらない、持って産まれた才能で決まっている」と考える傾向にあるいいます。
親が発するメッセージは子どもに大きな影響を与えます。
もし、親自身が「能力は努力によって変わらない…」というマインドセットを持って、「どうせ頑張ったって…」とか「才能がある人はいいよね」といった態度や言葉を使っていたら…それは、子どもに伝わるのです。
まったく意図しない形で、子どもを消極的な方向にコントロールしてしまう可能性があるのはとても怖い事ですよね。
「やればできる!」というポジティブでしなやかなマインドを持てるよう、子どもへの関わりや声掛けを見直してみたいと思いました。
おわりに
今回は、中曽根陽子著『成功する子は「やりたいこと」を見つけている』をご紹介しました。
親のちょっとした心がけで出来ることがたくさん書かれていましたが、著者は自身の子育てを振り返りつつ、その難しさにも触れています。
「理屈はよく分かるけれど、実践するには修練が必要」なことってありますが、「焦らない・決めつけない・コントロールしない子育て」もそれに近い部分があると思いました。
本書の内容を参考に、子どもの「探究心」を育む関わり方を、焦らずに習慣化していきたと感じました。
興味を持ってただけた方は、ぜひ実際に本書を手にとってみてください。
この記事が、なにか少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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