『非認知力が子どもを伸ばす』【解説・感想】学力テストで測れない能力とは?

本の紹介

今回は、中山芳一著『学力テストでは測れない非認知能力が子どもを伸ばす』という本をご紹介します。

この作品は、「非認知能力」について基礎から分かりやすく教えてくれる本です。

「非認知能力」は決して新しい能力ではないものの、数値化することが難しいため今まで漠然としか捉えられていませんでした。

ですが、これからの時代に重要な能力として、近年改めて関心が高まっています

「非認知能力……きいたことはあるけど、よくわからない」

という方におすすめの一冊です。

この記事では、順序だててお話ししますが、「非認知能力の育て方」について興味があるという方は、目次から「3.非認知能力の育て方」へ飛んでみてください。

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知っていますか?「非認知能力」

「非認知能力」とは?

「非認知能力」とは、コミュニケーション力・共感性・忍耐力・自信・自尊感情・意欲など、

他者と良好な関係を築く上で必要になる力

自分自身を律し、自らを高めようとする力

といった、広範囲な能力を指します。

二桁の計算や漢字の読み書きといった、テストで点数化しやすい「認知能力」に対して、イメージやものさしに違いが出やすい「測定しにくい力」といえます。

「非認知能力」は「生きる力」「人間力」「基礎的汎用的能力」などその時々で言葉を変えながら、繰り返しその重要性が指摘されてきました。

では、なぜ今になって改めて注目されているのでしょうか?

一昔前までは、いい大学に入って、いい企業に就職することが、安泰あんたいな人生を約束してくれました。「認知能力」の高さが評価される時代であったともいえます。

ですが、これからは第4次産業革命、Society 5.0、VUCA(ブーカ)時代などと言われるように、見通しがきかない、不安定で不確実な未来が待っています。

こういった時代を「認知能力」の高さだけで乗り切るのは無理があり、AIにはない

  • 世の中の問題を発見する力
  • 謙虚に学び続ける姿勢

などが求められるようになると言われています。

実際、教育のあり方も変化しつつあり、保育や学校教育でも「非認知能力」を伸ばしていく方向性が示されました。

大学入試においても「非認知能力」を評価しようと、試験の方法自体がバリエーションに富んできています。

著者の提唱する「非認知能力」

非認知能力は「その時々の状況」「環境」「これまでの経験」「自分自身の内面(感情)」などに左右される力であり、機関や団体によって微妙にその定義が変わってきます。

今回は、著者が提唱する「非認知能力」をご紹介します。

  • 自己内対話能力:自分と向き合う力― 想像力、自制心、忍耐力・耐性
  • 自己啓発能力:自分を高める力― 自信(自尊感情)、柔軟性、意欲・情熱
  • 他者協働能力:他者と繋がる力― コミュニケーション能力、共感性、社交性・協調性

それぞれ詳しく見ていきます。

自己内対話能力

自分の中で自分と対話する能力のことです。

この能力を高めることで豊かな思考ができ、自分で自分に言い聞かせるような形で感情をコントロールしたり、自分を律したりすることができるようになります。

忍耐力や耐性(レジリエンス)の獲得・向上にもつながります。

自己啓発能力

自分自身をより高みへと導く能力です。

自分自身を信じ、現実をしっかり見つつ「どうにかなる」と物事を楽観的に捉えることができれば、前向きに物事を進めていくことができます。

情熱や意欲なども「自分を高める」ことに繋がります。

他者協働能力

他者と協働を進めていくための能力です。

他者の視点に立って他者を理解しようとする共感性や、その場に応じたコミュニケーションができる能力が含まれます。

※著者は一般的に非認知能力の一部とされる「自己肯定感・自己受容感」を「非認知能力」を伸ばしていくための「基礎」に当たる部分であると捉え、あえて「非認知能力」とは区別して考えています。

「非認知能力」と子どもの育ち

子どもの発達について知っておく

著者は、「非認知能力」を考えるにあたって、子どもの発達について知っておくことも大切だと言います。

 建物はしっかりとした土台を作り、その上に柱を立てて筋交いでより丈夫にして、そこから外壁や内装を整えていきます。(中略) それでは「人間」は? もちろん人間は「もの」ではないので、はっきりとした順序立てをして組み立てていけるはずはありません。しかし、その逆に順序立てがまったくないのかというと、そうでもないですよね。(中略) 一言で「子ども」といっても、乳児から幼児、児童や青年といった時期があります。こうした時期にはそれぞれに発達の特徴があり、特徴に対応した育て方が求められるわけです。

中山芳一著『学力テストでは測れない非認知能力が子どもを伸ばす』株式会社リーブルテック(2018)

なんとなくでも発達に関して知っていれば、まだ理解力や我慢する力が十分でない赤ちゃんに「言うことをきかせること」が無理であるのも理解できます。

人間の発達は、年齢を基準とした発達段階 (ライフステージ) のタテ糸と「身体的発達」「精神的社会的発達」「知的言語的発達」の3つ発達領域のヨコ糸があります。今回は発達領域 (ヨコ糸) について詳しくみていきます。

身体的発達

文字通り、身体の発達についてです。「生殖型(系)」は14歳以降に急激に発達します。

筋肉や骨などの「一般型(系)」は産まれてから短い間に急激に成長して、第二次性徴 (思春期) の時にもぐんっと伸びあがります。

面白いのは「神経型(系)」の伸び方です。産まれてから急速に発達し、幼児期後半(4~5歳)には成人の80%、小中学生では成人と同等に発達します。また、五感に関わる脳の発達は、3歳くらいで大人並みになります。

つまり、人と同じように視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚を働かせることができるし、細かな動きなども筋力さえ伴えば大人と同じくらいできるということです。

手先を細かく動かすような活動や、バランス感覚・リズム感が必要になる動き、五感をめいっぱい働かせるなど、いろいろな体験をさせてあげられたらいいですね。

精神的・社会的発達

「自分の意思を表出したい意識」「他者とつながりたい意識」に分けると捉えやすいそうです。

赤ちゃんは自己中心的でなければ生命維持ができないため、「自分を表出したい意識」が全面に出ます。

このとき、自己中心的な意識を大人から無条件に受け入れられることによって、“自分はここに存在していいんだ”という、いわゆる「自己肯定感」が育ちます。

だいたい、幼児期後半(5歳)くらいから、「他者とつながりたい意識」が芽生え初め、状況に応じて我慢するなど、折り合いを付けられるようになってきます。

小学校中学年(小3~4)頃には、「大人」という異質な他者に対して、子ども同士での繋がりを強めていきます(ギャングエイジ)

大人と心理的な距離を取り、自分達で決めたルールの中で集団生活を行おうとするようになります。

そして、小学校高学年(小5~6)では気の合う仲間同士での繋がりを築く一方で、公的な関係を広げていける時期でもあります。気の合わない他者とも、自分の好き・嫌いを超えてコニュニケーションを取ることができるようになっていきます。

知的・言語的発達

思考する脳は、3歳くらいまでにぐんっと発達し、10歳頃から思春期以降にかけて再び伸びあがります。

私たちは「思考」をするとき、自分の内側に話しかける形で対話を行います。

この時に自分自身に向かって発せられる言葉を「内的言語」といい、4歳くらいから身に着け始めるといいます。

内的言語を身に着けて思考ができるようになることは、感情をコントロールしてより理性的なふるまいをすることにも繋がります

「思考(理性)」と「感情」はコインの裏と表のような関係にあり、「思考」の面が表に出ているときは衝動的な「感情」抑えることができます。

注意したいのは、思考力が伸びあがり大人レベルへと近づいていく9~10歳くらいの子供達への関わりです。

この時期になると「論理的思考」や「科学的思考」ができるようになってくるため、話の矛盾にも気づけるようになってきます。

まだ子どもだと思って、大人がだましだまし接していると手痛いしっぺ返しをくらうかもしれません。

非認知能力の育て方

子どもの達の発達について大まかに理解できたところで、いよいよ「非認知能力」の育て方です。

著者は「振り返り」を通じて体験を経験、そして学びへと深めていくことが大切であるとしています。

体験を「体験止まり」にしない

「非認知能力」を伸ばそうと考えたとき、様々な体験を通して自ら学んでいくことが基本になります。

例えば、コミュニケーションに関する知識がいくらあっても、それだけではコミュニケーション能力は向上しません。

実際に他者とやり取りする中で、うまくいかなかったり、学んだノウハウを試してみたり、といった実体験によってコミュニケーション能力は伸びていきます。

「体験」と似たような言葉として「経験」や「学び」がありますが、著者はこれらの言葉を明確に区別しています。

「体験」とは、“そのときに個人が実際に身をもって取り組んだことです。

一方で「経験」は体験を通して気づきや発見があったり、感情的が動いたりする中で“体験が単なる体験に終わらず、その体験が自分の中へ内面化すること”としています。

そして、経験から教訓を引き出し、すでに血肉となっている経験・知識と関連付けたり、分析したりすること「学び」です。

まったく同じ体験をしているはずなのに、一方の人は着実な成長をとげ、もう一方の人はあまり成長を感じられない…といったことは日常でも起こりますが、伸び悩む人は「体験」が「体験止まり」になってしまっていると考えられます。

「体験」を「体験止まり」にしないためには、「振り返り」を行うことが最も重要です。

振り返りの「量」と「質」が大事

「振り返り」は「量」をこなすことと「質」を高めることが大切です。

学校でのテストがうまくいかなかった例を考えていきます。

「今日、学校でテストがあった」

というのは、単に事実を振り返っただけですが、そこで終わらず、

「テスト中、問題が全然解けなくて焦った」

という状況や自分自身の感情について言語化してみます。

さらに、「なぜ問題が解けなかったのか?」と深堀りしていくと、

「テスト前の勉強が不十分だったから」

「次からはもっとしっかり準備をする」

といった原因や対策を導くことができました。これが「質」を高めるということです。

「体験」は、非日常で特別な何かである必要はなく

  • 学校でのテストがうまくいかなかった
  • 学校で友達とケンカしてしまった
  • ずっとできなかった逆上がりが今回はうまくいった

といった日常の出来事でも充分です。

大人は何か特別な体験をさせてあげたいと思いがちですが、子どもは日々の生活や、自発的な遊びを通して勝手に学んでいく部分もあります。

振り返りを促すような声掛けは必要かもしれませんが、むしろ“うまく手を放していってあげる”ことも必要かもしれません。

終わりに

今回は、中山芳一著『学力テストでは測れない非認知能力が子どもを伸ばす』をご紹介しました。

この記事では「子どもの非認知能力を伸ばす」という視点から解説をしましたが、本書の第Ⅴ章のタイトルは「大人たちも非認知能力を!」。自分自身の「非認知能力」を考えてみるきっかけにもなりました。

興味を持っていただいた方はぜひ実際に本書を手に取ってみて下さい。

この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んで下さってありがとうございました。

プロフィール
ひなた

・1989年生まれ
・2児(5才・7才)のママ
・リハビリの専門職
・趣味は読書&散歩

このブログでは、子育てや仕事、生き方に迷ったとき私を支え、活力となってくれた本をたくさんご紹介していきます。

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