友田明美著『子どもの脳を傷つける親たち』【解説・感想】マルトリートメントを改めるきっかけに

本の紹介

今回は「最近ちょっと子ども達に怒りすぎているかも…」と悩んでいるときに時に出会い、衝撃を受けた本「子どもの脳を傷つける親たち」をご紹介します。

私はできることなら些末(さまつ)なことで怒らずに日々穏やかに子育てを楽しみたいと思っています。

でも現実には、日々やるべきことに追われ、イライラして、八つ当たりのように子ども達に声を荒げてしまうこともありました。

しかし、この本に出会い「親の不適切な関わりが子どもの脳を“物理的に”傷つける」という内容に危機感を覚え、日常的に怒ってしまう自分を本気で変えようと決意しました。

  • 自分自身に余裕がなく、子どもを日常的に怒ってしまって罪悪感を感じている。
  • 「怒ること」が子どもに与える悪影響について知りたい。
  • 脳が “物理的” に傷つくってどういうこと?と興味がある。

という方にお勧めの一冊です。

怒らないための具体的な方法が書いてあるわけではありませんが、本書の内容を思い出すことで、グッと自分にブレーキを掛けることができる。そんな効果があると思います。

【忙しいあなたへ プロのナレーターによる本の朗読アプリ 「Audible」もおすすめ】

※無料体験中でも解約できます

本書はこんな本

本屋さんで「怒らない子育て」をテーマにした本を見かけたり、実際に読んだことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これらの本は内容に多少の違いはあれど、基本的に「なるべく怒らないで子育てする」ことを奨めるものです。

本書も「過度に怒ること」に対して否定的な立場を取っている点ではこれらの本と同じですが、決定的な特長が一つあります。

それは、一般論や経験論ではなく親の不適切な扱い(過度に怒ることを含む)による重大なデメリットを数々の科学的なデータを基に説明しているという点です。

そのため、本書の主張には、説得力・納得感があります。

「子どもとの関わり方」「子育て」について扱った本であると同時に、「脳科学」「医学」に関する本でもあるので、そういったテーマに関心がある方にも興味深い内容だと思います。

脳の部位などの専門用語も出てきますが、そこまで難しくはないので、気にならずに読めました。

親の不適切な関わりで子どもの脳が傷つく!?

わたしは三〇年近く小児精神科医として子どもの発達に関する臨床研究を続けてきました。大人の不適切なかかわりによって、子どもの脳が変形するということが、長年のリサーチから明らかになってきたのです。

 これまで、学習意欲の低下や非行、うつ病や摂食障害、統合失調症などの精神疾患は、主に生来的な要因がもとで起こると考えられてきました。しかし、脳科学の研究が進むにつれ、子ども時代に受けたマルトリートメントが脳に悪影響をおよぼし、結果、こうした症状が出現、もしくは悪化することが明らかになってきています。

友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』頁11,15 NHK出版新書 (2017年)

私が一番衝撃を受けたのは、親の不適切な関わりによって脳そのものが変形するという事実です。

脳の構造自体に変化が起こるとすれば、生涯に渡って悪影響が及ぶというのも納得できますよね。 

また、虐待は「性的虐待」や「身体的虐待」、「精神的虐待」などに分けられるのですが、受けた虐待の種類によって脳がダメージを受ける部分が異なるそうです。

子どもは自分自身を守るために、脳を変形させてそのストレスに適応するそうですが、どのような虐待を受けたかによって“どのように脳を変形させるか”にも共通した傾向が出てくるというのは驚きです。

子どもの脳を傷つける「マルトリートメント」とは?

本書に何回も繰り返し出てくるキーワードがあります。それが、「マルトリートメント」です。

 そして、八〇年代になると、児童虐待をより生態学的な観点からとらえるようになり、「チャイルド・マルトリートメント(child maltreatment)」という表現が広く使われるようになりました。maltreatmentは、treatment(扱い)にmal(悪い・悪く)という接頭語がついたもので、日本語では「不適切な養育」と訳されています。 これは虐待とほぼ同義ですが、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称です。

友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』頁28~29 NHK出版新書 (2017年)

虐待ときいて私がパッと思い浮べたのは、体罰といった「身体的虐待」や、身の回りのお世話を放棄する「ネグレクト」です。

一方、マルトリートメントの概念では、”夫婦間での暴力を見せる”といった、一瞬、「虐待?」と思えることも、こころの発達を妨げる「不適切な関わり」であると捉えています。

マルトリートメントは従来の虐待を含めた、より広い概念といえそうです。

著者は本書で「この『マルトリートメント』という言葉が日本で広く認知されるようになってほしい」と述べています。

「虐待」というインパクトの強い言葉では、子どもに対して不適切な関わりをしていても「虐待という程ではない」と思われてしまいがちで、行為そのものが見過ごされてしまう可能性があると言います。

自分には当てはまらない?

衝撃的なデータや知見に興味を持って読み進めていた私ですが、同時に心がザワザワしてくるのを感じました。

時には強い言葉で感情的に怒ってしまう自分に気づいていながらも、心のどこかでそれを認めたくなかったのです。

「たまに怒ってしまうけれど、私だって子どものことを思って一生懸命子育てしている…」

そんなふうに自分を擁護(ようご)していました。しかし、著者はこのように述べています。

 日々、子どもと接するなかで、こうしたマルトリートメントがまったくないという家庭など存在しないでしょう。 しかしながら、マルトリートメントの強度や頻度が増したとき、子どもの小さなこころは確実に傷つき、成長過程の脳は変形する可能性があることを、わたしたち大人は見逃してはいけません。

友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』頁15 NHK出版新書 (2017年)

現実的にマルトリートメントをゼロにすることはできないにしても、だからといってこの状況をそのままにしていいというわけではない…。

自分もマルトリートメントをしてきたのかもしれない…そのように反省しました。

まとめ

今回は、本書のメインテーマやキーワードを中心に解説と感想を書きましたが、他にも

  • 「傷付いた脳の治療とケア」
  • 「愛着形成」
  • 「マルトリートメントの予防」

などについても書かれていて、紹介できていない部分が多いです。

興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手にとり、じっくりと読んでいただければ、より理解が深まると思います。

今回の記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました