ヨシタケシンスケ絵本 大人におすすめ「生と死」がテーマの3冊

本の紹介

今回は、ヨシタケシンスケさんの絵本の中から「生と死」がテーマのおすすめ作品を3冊ご紹介します。

ヨシタケさんと言えば、その優しくユーモアのある作風が人気のイラストレーター・絵本作家です。

児童書の挿絵・絵本などを数多く手がけていらっしゃいます。

この記事では、

  • おすすめ絵本3冊のあらすじと解説
  • ヨシタケさんの絵本がなぜ大人におすすめなのか

について書いていきます。

普段はあまり考えない「生と死」というテーマに、絵本を通して触れてみることで、現在の生き方を見直すきっかけになるかもしれません。

メメンとモリ

本作はヨシタケさん初の長編絵本で、3作のオムニバス形式となっています。

タイトルの「メメントモリ」の言葉の意味は、「死を忘れるな」。

冷静な姉メメンと、情熱家の弟モリのやりとりを通して、「人は何のために生きているの?」という踏み込んだテーマに対するヨシタケさんの示唆が散りばめられています。

メメンとモリとちいさいおさら|あらすじ・解説

メメンが作ったお皿を割ってしまったモリ。「世界にひとつしかないお皿なのに…」といつまでもクヨクヨしているモリに、メメンは「だいじょうぶよ、またつくればいいんだから」と励まします。

https://yomeruba.com/feature/pic-book/ehon/yoshitake-shinsuke/mementomori.html

「割れたお皿」が「死」のメタファーになっていて、

“「ずっとそこにある」ってことよりも、「いっしょに何かをした」ってことのほうが大事じゃない?”

と、軽い語り口でサラッと核心をついたことメメンが言います。

人生はいつまで続くか分からない。長生きするかもしれないし、明日死ぬかもしれない。

未来は誰にも分からない。

だから、今こうして生きている時は、自分のしたいように生きたらいいんじゃない?

必死になって頑張ってもいいし、のんびり過ごしてもいい。

そんなメッセージを感じます。

メメンとモリときたないゆきだるま|あらすじ・解説

夜のうちに降った雪。メメンとモリは次の日の晴れた朝、張り切ってゆきだるまをつくりました。

でも雪は足らず、晴れて溶けかかり、できあがったゆきだるまは想像していたものと違いました。

複雑な顔をしてゆきだるまをみつけるメメンとモリ。

でもゆきだるまは、そんなふたりの顔を冷静に見ていたのです。

https://yomeruba.com/feature/pic-book/ehon/yoshitake-shinsuke/mementomori.html

このお話の雪だるまは、「生まれた瞬間からガッカリされている存在」

期待して期待が裏切られる側も、期待されているのに期待に応えられない側も、

“だれもわるくない。でも、だれも、しあわせじゃない”

こういう苦しい状況、現実世界にもありますよね。

そこで雪だるまは、もし来世で人間に生まれ変わったら、同じような境遇の「きたない雪だるま」を写真で撮ってまわろう、

自分がしてほしかったことをしてあげよう、と想像しながら溶けていきます

この「溶けていく」というところにも、「死」のニュアンスを感じます。

現実世界をどうにも変えられない時、「来世ではきっと…」と想像することが、一種の救いになることがある。

けっこう重い内容なのですが、ヨシタケさんの可愛らしいイラストとユーモアで、それが絶妙に中和されている、そんな作品です。

参考URL:https://book.asahi.com/article/15006047

メメンとモリとつまんないえいが|あらすじ・解説

つまらない映画を見てしまったメメンとモリ。「時間を損しちゃったね」と話しているうちに、モリは「みんなは楽しいことをしているのに、ぼくだけ損をしているみたい」と思いはじめます。

そんなモリにメメンは「いきものはべつに楽しむために生きているわけじゃないからね」と言うのですが…。

https://yomeruba.com/feature/pic-book/ehon/yoshitake-shinsuke/mementomori.html

“「じゃあ、人は、なんのために生きてるの?」”

というモリの直球の質問に対して、

「思ってたのとちがう!」ってびっくりするために生きているのよ。

とメメンが答えます。

思ってたのと違うから、苦しいことも、悲しいことも、嬉しいこともあるのだと。

さらに、“こたえは、まいにちちがっててもいい”と言います。

人の心も、人と人との関係も、世の中も、毎日移り変わっていくのですから、「人は、なんのために生きているか?」の答えが、その時々で変わったっていい。

とてもヨシタケさんらしい考え方だと思いました。

ヨシタケシンスケ著『メメんとモリ』株式会社KADOKAWA(2023年)

このあとどうしちゃおう

出典:https://yoshitakeshinsuke.net/books/konoatodoushicyao/

しんだおじいちゃんが書いた「このあと どうしちゃおう」ノートがでてきた。
そこには、「自分がしんだらどうなりたいか」が いっぱい書いてあった。

「うまれかわったらなりたいもの」「てんごくってきっとこんなところ」「こんなおはかをつくってほしい」……おじいちゃんは、しぬのがたのしみだったんだろうか。

でも、もしかしたらぎゃくだったのかもしれない。

https://yoshitakeshinsuke.net/books/konoatodoushicyao/

いわゆる「エンディングノート」とはちょっと違い「このあとどうしちゃおう」ノートには、何やら楽しげなことがたくさん書かれています。

例えば、「こんなかみさまにいてほしい」のページでは、

“いままでのおもいでばなしをおもしろがってくれる”

“「じゅみょうってきまってるの?」とか、しりたかったことをおしえてくれる”

など、ユーモアにあふれた内容が続きます。

「天国」ってどんなところなのか?

死んだら人はどうなるのか?

誰でも一度は考えたことがあると思いますが、忙しく日々を過ごしていると、そんな空想をする時間すらなかったりしますよね。

『このあとどうしちゃおう』を読むと、自然とそれらに思いを馳せることになります。

その上で、生きている間はどうしたいのか?を考えるきっかけになると思います。

「死」というテーマを扱いながらも、あまり “重くない” 後読感もこの絵本の特長です。

一番最後のページ、ブランコで空をとぶ練習をする「ぼく」の後ろを、ビニール袋が風に吹かれていくのですが、

このビニール袋が、”かたちをかえてたまにようすをみに”きたおじいちゃんな気がしてなりません (あくまで個人の想像です)。

ヨシタケシンスケ著『このあと どうしちゃおう』ブロンズ新社(2016年)

もしものせかい

出典:https://yoshitakeshinsuke.net/books/moshimonosekai/

少し前の私に、どうしても必要な物語でした。 ヨシタケシンスケ

やぁ おはよう。 とつぜんでもうしわけないんだけど、

ボク もしものせかいにいくことになりました。

大事なものを突然失ったとき、思いがけない別れが訪れたとき。

心にぽっかりと空いた穴は、どうやって埋めたらいいんだろう。

ヨシタケシンスケの新たな世界。

何度も読み返したくなる優しい物語です。

http://shop.akamama.co.jp/view/item/000000000876

開いた窓から突然、ネコが部屋に入ってきて、ロボットのおもちゃを持っていってしまうところからお話は始まります。

そして、男の子の夢にロボットが登場。

「ボク、もしものせかいにいくこといくことになりました。」と男の子に告げます。

「もしものせかい」とは “きみのこころのなかにあるもうひとつのせかい”

いわゆる「あの世」に近い世界ではあるのですが、

“きみのめのまえからきえてしまって、「もしも あのとき…」っておもいだすもの。”

つまりは、後悔や未練なども「もしものせかい」にあるといいます。

その上で、すべては「もしものせかい」にある。存在する場所が変わっただけで、けっしてなくなったわけじゃないと、優しく語りかけます。

  • 大事な誰かを亡くした時
  • 望まぬ別れをしいられる時
  • 追い求めていた夢に挫折した時

そっとページを開きたい絵本です。

ヨシタケシンスケ著『もしものせかい』株式会社赤ちゃんとママ社(2020年)

ヨシタケさんの作品を大人におすすめする理由

独自の世界観で人気の絵本作家、ヨシタケシンスケさん。

日常の出来事や空想をユーモアたっぷりに描く絵本は、子ども達に大人気ですが、実は哲学的で奥が深い内容の作品も多いんです。

実際、ヨシタケさんの絵本の対象年齢をみてみると、「3歳、4歳、5歳、大人」と、「大人」が含まれている場合があります。

これは想像ですが、ヨシタケさんは「宗教」や「哲学」に精通していらっしゃるんじゃないかと思います。

今回ご紹介した『メメンとモリ』の一節、

“どんなものでも、いつかはこわれたりなくなったりするんだから”

は、仏教の「諸行無常」の考え方ですし、

“「自分では選べないことと、自分で選べることがある」ってことよね。それをみわけられるようになりたいわよね”

これは、神学者「ニーバーの祈り」

「主よ、変えられないものを受け入れる心の静けさと、変えられるものを変える勇気と、その両者を見分ける英知を我に与え給え」

からきているのかなと思いました。

作品を通して、哲学のエッセンスに触れている感覚があります。

本を一冊読もうとすると、それなりの集中力がいりますが、絵本ならものの10分で読めてしまうのもいいところ。

そんな短い時間でも、自分の生き方を考えるきっかけになったり、心にそっと寄り添ってくれたり、クスッと笑えてちょっと元気になったり…

日々忙しく、まとまった時間が取れない大人にこそ、ヨシタケさんの絵本を読んでみてほしいです。

おわりに

今回は、ヨシタケシンスケさんの作品の中から、大人におすすめしたい「生と死」がテーマの絵本を3冊ご紹介しました。

「大人におすすめ」ということでしたが、もちろん子どもでも楽しめます

今回ご紹介した3冊を小学2年生の長男にも読んでもらったのですが、

「おもしろかったよ!」

と言っていました。

人生経験によって楽しみ方や読み方が変わっていく、一生付き合っていける絵本だと思います。

興味をもっていただけたら、ぜひ実際に手にとってみて下さい。

この記事が、何かお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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