今回は出雲勝一著『ソファを捨てれば、子どもが伸びる!』をご紹介したいと思います。
「ソファを捨てることと、子どもを伸ばすこと、どのような関係があるの?」と気になりますよね?
本書の提案は、「家族の共用スペースであるリビングでかなり場所を占領し、窮屈さを生み出してしまうソファを手放すことから、家族が元気になる空間づくりを始めてみませんか?」というものです。
著者は一級建築士として住宅設計に取り組みつつ、学習塾を開校し塾長になるという、ちょっと変わった経歴の持ち主です。
住宅のプロであり、かつ教育のプロでもある著者が考える「子どもが伸びる家」とは?
詳しく見ていきます。
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うまくいかないのは家のせい?
子ども達にとって、家族が集まるリビングダイニングが居心地のよいものになっているでしょうか?
家に帰ってきたと思ったらすぐに子ども部屋にこもってしまい、家族みんなが一緒に過ごす時間がほとんどない…なんていうご家庭もあるかもしれません。
このような「寂しい家族のあり方」には、基本的な家族関係がうまくいっていないことはもちろんのこと、その要因の一つに「住まい」、つまり住環境が影響しているのでは?と著者はいいます。
古く日本の住宅は、畳の部屋が隣り合わせになっていて、襖や屏風などで空間をゆるく仕切り、同じ空間を食堂にも寝室にも利用するという、かなり合理的なものでした。
プライバシーはないですが、その分、家族が顔を合わせて過ごす時間はたっぷりあった。
しかし、現代の日本の住宅は3LDKといったように、リビングダイニング + 個室という間取りが大半です。
個室は文字通り、「個人の部屋」ですから家族が一緒に過ごすスペースは基本的にリビングダイニングだけになります。
そのリビングダイニングがモノや家具であふれ、狭苦しく、家族みなでゆったり過ごすための充分な広さがない…。
それに引き換え、子ども部屋は自分一人の空間でリラックスでき、最近だとスマホ一つ持ち込めば動画もゲームも、友達との連絡も簡単にできる…これでは引きこもってしまうのも理解できます。
家族が一緒に過ごすリビングダイニングを居心地よい空間にすることが、家族がより家族らしくあるために、重要なポイントであるようです。
思い切ってリビングのソファを捨てる
そこで、本書では思い切ってリビングのソファを手放してしまうことを提案します。それによって、空間を広々と使いましょうというのです。
「なぜ、ソファなのか?」という疑問が湧いてきますが、一つは冒頭でも書いたようにソファが一般的に大きな家具であり、スペースを占領してしまいがちである点。
もう一つは、「椅子座と床座を混合した生活」ができるという点です。
著者は、「3人掛けと表示のあるソファに何人座りますか?」と問います。
横並びに、ぎゅうぎゅうになって3人で使用するでしょうか?
子どもがある程度大きくなれば、お父さんがソファに腰掛けているのをみて、遠巻きに別の場所にポジションを取ろうとするのはなんとなく想像できますよね。
ソファやイスに座ることが中心となるのをイス座の暮らし、畳や板の間に直接に座ることが中心となるのを床座の暮らしといいます。(中略)ソファやイスだと、「あなたはここよ」と居場所が固定されます。そうなると、そこに座るか座らないか、お互いの距離、間合いもオンかオフかの選択を迫られるので、息苦しくなり個室へ逃げ込むという悪循環を生むのです。だからダイニングテーブルでイス座と、居場所があいまいに選べる床座の両方を取り入れた生活をお勧めするのです。
出雲勝一著『ソファを捨てれば、子どもが伸びる!』保育社(2011)頁54~55
床座では、どこにスペースを取ってもいいしお互いの間合いを微調整できる。
椅子座だけの生活様式だとこれができなくなるため、結果的にリビングから子どもの居場所を奪っている可能性があるといいます。
子ども部屋を与える前に「子どもゾーン」をつくる
子ども部屋の与え方についても参考になる部分がたくさんありました。
子ども部屋を与えたことをきっかけに、子どもが部屋に引きこもって困っている親御さんも多いとききますが、その原因はシンプルに “まだ子どもなのに部屋を渡すから” だと言います。
つまり、個室を適切に使える分別がついていない、もう大人として認められる段階になっていない状態で部屋を与えることに問題があるというのです。
著者は、個室を与えることにまだ不安が残るようなら「子どもゾーン」をつくることをすすめています。
本書の中では子どもゾーンを与える際の基本的なコンセプトを7つ挙げていますが、今回はその内の2つ、
- 子ども部屋を「デスクゾーン」と「就寝ゾーン」に分ける
- デスクゾーンをLDKと同じ階に設ける
を反映した、「半個室」というアイデアを紹介します。
「半個室」で「寝る場所」と「勉強する場所」を分ける子ども部屋
一般的な子ども部屋には、勉強机とベッドがお決まりのように配置されますが、本当にプライバシーを確保したいのは寝るときぐらいだと著者はいいます。
そこで、子ども部屋を「デスクゾーン」と「就寝ゾーン」に分解し、「就寝ゾーン」だけは個室や個室に近いスペースを用意。
その上で、勉強したり工作したりするデスクは共用スペースであるリビングに近い場所(もしくはリビングの中)に設けることで、家族が顔を合わせる機会を増やせないか?というのが「半個室」の考え方です。
ダイニングテーブルで勉強する、いわゆる「リビング学習」を奨める教育専門家もいますが、それに近い感じでしょうか。
「リビングに机があったらうるさくて集中できないのでは?」と思ってしまいますが、少々生活音があるくらいの方が、学習や創作にはちょうどいいのかもしれません。
どのような環境が集中できるかは、その子によって違うので子どもをよく観察し、子ども自身の意見をきく必要はありますが「半個室」を試してみる価値はあると思います。
まとめ
今回は、出雲勝一著『ソファを捨てれば、子どもが伸びる!』をご紹介しました。
ソファを手放すのは勇気がいりますが、本書の内容を知ることで
「リビングで窮屈さを作っているモノはないか?」「家族がくつろげる空間になっているか?」
を見直すきっかけにはなると思います。
今回の記事では取り上げませんでしたが、著者自身の住宅づくり(子ども部屋を子どもの年齢に合わせてどんどん変えていきます)や、間取り例なども数多く紹介されていて参考になりました。
興味を持っていただけたら、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。
この記事が何かお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
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