アンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』【解説・感想】

本の紹介

今回はアンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』をご紹介します。

通知音が鳴って、反射的にスマホを手に取ってしまい「ほんの少しだけ」のつもりが、気づけば1時間…。

こんな経験のある方も多いのではないでしょうか。

私たちにとって生活必需品となったスマホ。

日々その恩恵をうけている一方で「やめたいのにやめられない」といったスマホ依存などの問題も出てきています。

この作品は、精神科医である著者が「なぜ、これほどまでにスマホに夢中になってしまうのか」を脳のメカニズムの観点から分かりやすく説明してくれる本です。

  • 最近、あまり集中できない
  • スマホを触りすぎていると分かっているのにやめられない
  • 子どもにスマホを与えていいのか迷っている

という方にお勧めの一冊です。

今回はスマホに夢中になってしまうメカニズムスマホが子ども達に及ぼす悪影響を中心に解説していきたいと思います。

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スティーブ・ジョブズのエピソード

ニューヨーク・タイムズ紙の記者が、あるインタビューでジョブズにこう尋ねている。「自宅の壁は、スクリーンやiPadで埋め尽くされているんでしょう? ディナーに訪れたゲストには、お菓子の代わりに、iPadを配るんですか?」それに対するジョブズの答えは「iPadはそばに置くことすらしない」、そしてスクリーンタイムを厳しく制限していると話した。

アンデシュ・ハンセン著・久山葉子訳『スマホ脳』株式会社新潮社(2020年)

私はジョブズが自社製品をプレゼンしているところを映像で見たことがありますが、堂々としていて製品に対する絶対的な自信が伝わってきました。

しかし、自分の10代の子ども達に関してはスクリーンタイムを厳しく制限していたというのです。

iPadの開発者であるジョブズ自身が「子どものタブレット端末の使用には慎重になっている」という事実は、客観的な研究結果と同じくらい、テクノロジーが私達に与える影響を物語っているのではないでしょうか。

ジョブズだけでなく、ビル・ゲイツも子どもが14歳になるまでスマホは持たせなかったそうです。

フェイスブックの「いいね」機能の開発者も、本来は保護者向けの「スマホ使用を制限するアプリ」をインストールして、自身のスマホ利用にブレーキを掛けたといいます。

テクノロジーに精通している人ほど、その魅力と表裏一体である危険性をよく分かっていて、利用を制限した方がいいと考えているのです。

なぜ夢中になってしまうのか?

キーワードは「ドーパミン」

「ドーパミン」は脳内伝達物質の一つです。

ドーパミンは快楽を司り、私たちが生き延びて遺伝子を残せるようにその行動を促してきました

食糧を得られたときや生殖行為などでドーパミンが増え、私たちは「報酬」を得ます。

しかし、ドーパミンは実際に食べ物を得られたときだけでなく「あそこに食べ物があるかもしれない」といった「期待」によっても分泌されることが知られています。

これがスマホが手放せなくなってしまう大きな原因になってくるのです。

脳は「知識」「情報」が大好き

 進化の観点から見れば、人間が知識を渇望するのは不思議なことではない。(中略) 天候の変化がライオンの行動にどう影響するのか。カモシカがいちばん注意散漫になる状況は? それがわかれば狩りを成功させられる確率が増し、猛獣の餌食になるのも避けられる。 周囲の環境を理解するほど、生き延びられる可能性が高まる―その結果、自然は人間に、新しい情報を探そうとする本能を与えた。この本能の裏にある脳内物質は何だろうか。もうおわかりだろう。そう、ドーパミンだ。

アンデシュ・ハンセン著・久山葉子訳『スマホ脳』株式会社新潮社(2020年)

新しい情報によってドーパミンが活動し、私たちは「報酬」を得ることができます。

しかも、先に触れたように報酬システムは「新しい情報を得られるかもしれない」という「期待」によっても作動します。

スマホを次々とタップしているとき、次のページで「新しい情報」に出会うことを「期待」して、私たちの脳ではドーパミンが活動し、結果、スマホから離れなれなくなってしまうのです。

しかも人間は「不確かなものでドーパミンが増量する」という性質も持ち合わせています。

(前略) チャットやメールの着信音が鳴るとスマホを手に取りたくなるのはそのせいなのだ。何か大事な連絡かもしれない―。(中略) 「大事かもしれない」ことに強い欲求を感じ、私たちは「ちょっと見てみるだけ」とスマホを手に取る。しかもこれを頻繁にやっている。起きている間じゅうずっと、10分おきに。

アンデシュ・ハンセン著・久山葉子訳『スマホ脳』株式会社新潮社(2020年)

SNSやアプリを作る側の大きな収入源は広告料です。

つまり、一分一秒でも長く私たちにスマホを使わせ、広告を見せることが収益に繋がる。

そのため、これらの会社には私たちの「脳」を熟知した専門家が多く雇われています。

そんな優秀な人たちが「どうしたら私たちをスマホ浸けにできるのか?」に知恵を絞っていると思うとゾっとします。

スマホが単なるデジタル機器ではなく、どれだけの脅威きょういであるかが分かってきます。

スマホが子ども達へ及ぼす悪影響

精神的不調・不眠

大人でもその魅力にあらがうのは難しいスマホ。子ども達への影響はどうでしょうか?

予想はしていましたが、悪影響はかなりあるようです。大きくは精神的不調・不眠・スマホ依存などです。

まずは精神的不調に関して。

ここ10年で精神的な不調から精神科を受診するティーンジャーが世界的に増えているそうです。

合計12万5千人の子ども・若者を対象とした16件の調査をまとめると、1日2時間を超えるスクリーンタイムは、うつのリスクを高めることが分かっています。

また、不眠も大きな問題です。

もともと10代は寝不足になりやすい時期だそうですが、20カ国 70万人の子どもの「睡眠の傾向」を調べたところ、10年前に比べ丸々1時間も睡眠時間が短くなっています

子どもは大人よりスマホ依存になりやすい

子どもは大人よりスマホに夢中になりやすいです。その理由もやはり「脳」にあります。

ひたいの奥にある前頭葉ぜんとうようは、衝動にブレーキを掛ける役割があります。「スマホを手に取りたい」と思ったときに、それを我慢させてくれるのです。

しかし、この前頭葉、成熟するまでにとても時間が掛かり、25~30歳まで完全には発達しないのだそう。

それに加えて若い内はドーパミンの活動自体が活発です。

ドーパミンの活動によって強い快感を感じると同時に「スマホを使いたい」という衝動を抑える前頭葉は未発達

そのため、子どもは大人に比べて依存症になるリスクが高いのです。

実際、スマホを使う頻度を各年齢層で調べた複数の調査によれば、大まかに若い人程スマホを使う時間が長いそうです。

「子どもを信じる」といってスマホを与えっぱなしにするのはかなり危険なことだと言えそうです。

スマホの脅威から守るには?

こんなスマホの脅威から子ども達を守るためにはどうすれば良いのでしょう?

はっきりと分かっていないことは多いものの、研究者達の共通見解に近いものはあるようです。

研究者たちの結論は簡潔だ。子供たちが能力を発揮するためには、毎日最低1時間は身体を動かし、9~11時間眠り、スマホの使用は1日最長2時間まで。この睡眠や運動、スマホ・タブレットの時間制限はごく現実的なものだ。だが、どれくらいの子供が達成できているかというと―たった5%だ。

アンデシュ・ハンセン著・久山葉子訳『スマホ脳』株式会社新潮社(2020年)

著者の言うとおり、スマホの使用を1日2時間までにするというのは、かなり妥当なように思えます。

ですが実際には “ティーンエイジャーは1日に3~4時間をスマホに費やしている” そうです。スマホの魅力に抗うのは、それだけ難しいということなんですね。

まとめ

今回はアンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』をご紹介しました。

スマホ一台で、通話やメールはもちろん、インターネットや動画、ゲーム、音楽鑑賞などいろんなことができるようになりました。

便利になった反面、今回取り上げたような、様々な問題が出てきているのもまた事実です。

スマホが一般的に使われるようになって、まだ10年ちょっとしか経っていないこともあり、研究が追いつかない状況にあるそうですが、確実に言えることは「スマホの使いすぎは私たちの健康を害する」というこです。

この本の内容を知ることで、自分あるいは子ども達の「スマホ生活」を見直してみるきっかけになるのではないでしょうか?

興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。

この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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