『ワーママはるのライフシフト習慣術』【解説・感想】

本の紹介

変化が激しい時代、社会の荒波で溺れぬように、ワーママ的泳ぎ方を徹底解説します。

尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

今回は、尾石晴(ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』をご紹介します。

この作品は、“家庭もキャリアも、賢くしたたかに楽しむための人生戦略”について教えてくれる本です。

著者の「ワーママはる」こと尾石晴さんは、4歳と8歳の男児 (初版発行時点) を育てるワーキングマザー。

バリキャリ路線を歩んできましたが、出産後は思うように仕事ができず、一気に「キャリアの迷い子」になったといいます。

現在はしなやかなキャリア転換に成功し、発信業 (Voicy パーソナリティー)・不動産賃貸業・ヨガインストラクターなど、多方面で活躍されています。

その華やかな経歴をみると、

「著者が特別に優秀だからできたのでは?」

「参考にできることなんてなさそう…」

と思ってしまうかもしれません。

ですが、家事・育児の不公平感に「なんで私ばっかり」と夫への不満をつのらせ、仕事と家庭の両立が思うようにいかず、人知れず焦りながらも奮闘する姿には、きっとあなたも共感できるはずです。

結果的に著者は、「100年時代の人生戦略」を意識して行動しはじめ、

「教育(学び)→仕事→引退」

を柔軟に行き来する「マルチステージ」の人生へと舵を切りました。

  • 今の働き方に限界を感じているけれど、どうしていいのか分からなない。
  • 仕事も子育てもなんだか中途半端で、こんなはずでは…と焦っている。
  • 「仕事と家庭」両立のためのヒントが欲しい。

という方にお勧めの一冊です。

この記事では、本書の内容の中から「仕事・家庭の両立」に関係が深い内容に絞って、ご紹介したいと思います。

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『ワーママはるのライフシフト習慣術』はこんな本

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコットン著『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』という本をご存じでしょうか?

国内でもヒットした作品で、人生100年時代をどのように生きていけばいいのか、具体的な戦略やヒントが詰まった一冊です。

キーメッセージは次の通り。

  • 金銭的な価値に換算される「有形資産」と、家族や友人関係、知識、健康などの見えない「無形資産」のバランス。
  • 生涯、ステージ (教育 → 仕事 → 引退) の移行を繰り返す「変身」を続ける覚悟。
  • 「会社中心の人生」から「自分中心の人生」へのシフト。
尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

著者は、この『LIFE SIFT』に書かれている内容を、自身の生き方に落とし込むべく、実際に5年程「試行錯誤」を繰り返しました。

『ワーママはるのライフシフト習慣術』では、「教育→仕事→引退」のサイクルを柔軟に行き来する「マルチステージ」を歩み始めた著者が、日々行った思考法や実践方、今まで培ってきた経験や知恵が、

「仕事」「人間関係」「子育て」「お金」「学び」の5つのテーマで書かれています。

冒頭でも書いた通り、この記事では、本書の内容の中から「仕事・家庭の両立」に関係が深い内容に絞って、ご紹介していきます。

ワーママの心構え

「トレードオフ」思考

 「トレードオフ」とは、「何かを得ようと思ったら、何かを差し出す」ことを意味します。 例えば、物を買おうと思ったら、お金を差し出します。のんびりしたいと思ったら、何かを止めて自分の時間を差し出さなければいけません。 物事の原理原則の基本は、トレードオフです。それなのに、なぜか私たちは、キャリアだとか、お金を稼ぐだとか考えると、すべてを手にいれようとしてしまうのです。両方とも得よう (得られるはず) と思うから、苦しくなります。

尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

気力や体力、時間など自分のリソースを育児・家事に費やしている分、仕事につかえるリソースは減るので、今まで同じような結果を出すのはそもそも難しい。

言われてみれば当然のような気もしますが、いざ自分事となると「私がもっと頑張れば、なんとかなるのではないか」と思ってしまいがちではないでしょうか。

「仕事で思うような成果がでない」

「仕事も育児も両方中途半端…」

と悩んだときには「トレードオフ」の考え方を思い出すと気持ちが楽になります。

「できないのではなく、今はそういうタイミングなんだ」

「トレードオフで出せないから、得られる結果が少ないんだ」

と気持ちを切り替えて、広い意味でキャリアを継続させようとすることが大切です。

「やり方」を変える時期にきた

当然ながら、仕事にかけている「身体的・思考的な時間」は減ります。結果として、使えるリソースが減っている分仕方ないのですが、なんとなく「仕事力が落ちた」ような気持ちになります。            では、これは本当に仕事力が落ちたと言えるのでしょうか? (中略)  決してそんなことはありません。ライフスタイルの変化に伴い、これまでの仕事の「やり方」を変える分岐点が来ただけです。

尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

ワーキングマザーは半ば強制的に使える時間が限られるので、「時間あたりの生産性を上げる」働き方に変える必要がでてきます

例えば、

  • 無駄な仕事を洗い出してそもそも止めてしまう
  • 力の入れどころを見極めて重要なことにリソースを割く
  • 仕事を前倒しで行う
  • 安請け合いをしない (仕事の取捨選択) 

など、単位時間当たりの生産性を上げる方法はけっこうあるものです。

最初はツライと思っていた仕事量でも、「生産性」を意識した働き方にシフトすることで、だんだんこなせるようになってくると言います。

これを著者は“ワーキングマザーの筋トレ”と例えています。

「属人化防止力」を身につける

「属人化」という言葉をご存じでしょうか?

「属人化」とは、平たくいうと「あの仕事のことは、あの人にきかないと分からない」という状態です。

「属人化防止力」を身に着けるというのは、「私がいないと、あの業務が回らない」という状況をなるべくなくしていくことです。

ですが、すでにいろいろと工夫をしている方も多いのではないでしょうか?

(前略) ワーキングマザーは、突発的な出来事 (子どもの病気や欠席など) で仕事に穴を開ける可能性があるため、日頃から属人化をしないように意識して仕事を開示したり、仕組みをつくっている人が多くいるからです。自分がいなくても、仕事の資料はどこにあって、進捗はどこでわかるか、誰が対応するかが日々明確になっています。

尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

この「属人化防止術」を家庭の中で活かすこともできます。

著者曰く“夫婦の役割にアンバランスが生まれるのは、どちらかに「属人化した業務」が発生しているから”だそうです。

確かに、わが家を思い起こしてみても

  • 学校の授業で使う準備物はママしか把握していない
  • 保育園・学校関係の書類はママが管理していて、パパは場所すらわからない

など、パッと思いつくだけでけっこうありました。

パパの帰りが遅く「ワンオペ育児」の方は、日常的な家事・育児であっても「属人化」している部分が多いのではないでしょうか?

こういったものを、パパ (あるいはシッターさん) でも「分かるように」「できるように」にしていく

この時にポイントとなるのが、“相手に完璧を求めないこと”です。

自分のやり方や完成度を相手にも求めてしまうと、そこに至らない場合が多く、ケンカになってしまいます。

「まぁ、やってくれればOK」くらいにハードルを下げておくことが「ママがいなくても家庭が回る」状況をつくるためのコツなのかもしれません。

悪循環から抜け出す思考法

 マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「組織の成功循環モデル」があります。「結果の質と、関係の質と、思考の質と、行動の質」この4つの質で、組織の「質」を見ています。 実は、これまでとは異なる働き方 (ワーキングマザー) になると、この質の罠にハマり、バッドサイクルに陥りやすくなります。

尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

ワーキングマザーは、単位時間当たりの生産性を上げる働き方にシフトしていかなければなりません。

ですが、産休・育休から復帰して、いきなりそのような働き方ができるわけではないので、一時的に「結果の質」が下がることがあります。

また、働き方が変わったことで上司や同僚との「関係の質」が悪化したり、肩身が狭い思いをすることで「思考の質」が落たり、思うようにいかないことでなげやりになって「行動の質」が落ちたりすることもあります。

何かしらをきっかけに、悪循環におちいってしまうと苦しいですよね。

そこで、著者はバッドサイクルにハマらずに、これらの「質」を上げていくために、どのような意識で仕事に取り組んだらいいのかを教えてくれます。

  1. ゴールを重視する―【結果の質】
  2. 「なぜ」を使って視座を上げる―【関係の質】
  3. 枠や制約をうまく使う―【思考の質】
  4. タスクを細かくするクセをつける―【行動の質】
尾石晴 (ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』フォレスト出版株式会社(2021年)

ゴールを重視する―【結果の質】

仕事に取り掛かるときに、「目的」と「手段」があやふやになってしまうことはないでしょうか

例えば、「取引先との商談を成立させるために、資料を作る」のであれば、ゴールは「商談を成立させる」ことであって「資料をつくる」のは、あくまで手段であるはずです。

それなのに、資料の細部にこだわって時間が掛かってしまい、最も重要であった取引先のニーズの把握といった情報収集が甘くなってしまう…。

全部完璧にできたらいいのですが、働ける時間が限られている分、ゴールを重視した仕事のやり方にしないと、準備不足になってしまい「思うように結果がでない」となりがちです。

会社からの評価を得るという意味でもゴールを重視するのは大切です。

「なぜ」を使って視座を上げる―【関係の質】

仕事に限らず、物事がうまくいかないと「外的な原因」のせいにしてしまいがちです。

ですが、

「仕事量が多すぎるから」

「上司が急な仕事をふってくるから」

と他人のせいにしてしまうと、そこで思考が止まってしまうため、具体的な解決策にはつながりにくいと言えます。

そこで「なぜ?」と深堀りしてみると「内的な原因」に気付くことができます。

「なぜ、仕事量が多いのか?」

― 私が完璧主義者で、さほど重要でない細部にこだわっているからではないか。

―ほぼ完成というところまで仕上げてから上司に提出するため、修正作業が多くなっているのではないか。

外的なことに原因を求めなくなってくると、他人のせいにしなくて済むので、「関係の質」も良くなります

枠や制約をうまく使う―【思考の質】

ここでいう「枠や制約」とは「就業時間」と考えて差支えないと思います。

十分な時間をかけられないから、満足のいく仕事ができないのではなく、

最初から「枠がある」「絶対にここで帰らなければならない」と思っている方が、生産性が上る”

と著者はいいます。

多くの方も似たような経験があるかと思いますが、

「この仕事を午前中までに終わらせて」

と頼まれれば、限られた時間の中で、なんとか形をつけようと頑張りますよね。

でもこれが、

「今週までにやってくれればいいよ~」

と言われると、なかなか集中して取り組むことができず、後回しにした結果、時間がたっぷりあった割には、イマイチな仕上がりになってしまうなんてことも。

枠があることで、かえって仕事が効率的に進むことも多いと捉え「枠や制約」をポジティブに利用していきます。

タスクを細かくするクセをつける―【行動の質】

社内でプレゼンをする仕事があったとして、その仕事をどのような流れで行うのか考えてみます。

すると、アイデアを出す、主張を決める、プレゼンの構成を考える、資料を作る、上司にチェックを依頼するなど、細かいタスクに分けることができます。

「仕事」に含まれるアクションを分解して、目に見える形にしていきます

時間的な制約がある場合には、「やめられるもの」「減らせるもの」「代用できるもの」をみつけておき、優先順位をつけると、生産性の向上にもつながります。

家事効率で欠かせないこと

著者は、生活を便利にするために、いわゆる便利グッズをいろいろと購入していた時期があったそうです。

ですが、結局は使わなくなり、家事効率化からはほど遠い状況になったといいます。

家事を効率化するために必要なのは、便利グッズではなく“「自分と家族にとって、何が必要か、何が大切か」を知ること”だといいます。

そこで『7つの習慣』という大ベストセラーから「時間マトリックス」を応用してこれを考えています。

家事を「できる・できない」と「好き・嫌い」の軸で4つの領域に分けてきます。

〈1〉できる・好き 〈2〉できる・嫌い 〈3〉できない・好き 〈4〉できない・嫌い

この中で、「〈4〉できない・嫌い」に注目します。

ここに入った家事は「外注する」「回数を減らす」「やめる」ことができないか考えます。

著者の場合は、「買い物」が該当しました。

商品を持ってかえるのか重くてイヤなことに加え、急いでいるので買い忘れをせずに買い物を済ますことができませんでした。

そこで買い物には行かず、生協や Amazon定期便を利用するようにしました 。

また、「〈2〉できない・好き」に入っている「掃除」も、ルンバと週1回のシルバー人材センターにお願いしているそうです。

「掃除」は好きだけど、家族と過ごす時間や趣味の時間を減らしてまでは「できない」と考えたからです。

その他、どうしても減らせない項目は「ながら家事」にしてしまって、意味を転換する 方法が紹介されていました。

例:洗濯物の時間に「kindleの読み上げ」を聞くことでインプットの時間にする。

このように「できる・できない・好き・嫌い」を軸に、「家族の優先度」と「自分の優先度」を明らかにしていくことで、家族と自分の満足度を上げる仕組みづくりができるといいます。

おわりに

今回は、尾石晴(ワーママはる)著『ワーママはるのライフシフト習慣術』をご紹介しました。

この記事では、「仕事と家庭の両立」という切口で、本書の内容を厳選して解説してみました。

ご紹介しきれませんでしたが、その他のテーマである「お金」「学び」などについても、「うむむ」と納得させられる部分が多かったです。

興味を持っていただけたら、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。

この記事が何かお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

プロフィール
ひなた

・1989年生まれ
・2児(5才・7才)を育てるワーママ
・本が大好き 
 年間読書量:90冊
 ※Audibleでの【耳読書】含む

このブログでは、子育てや仕事、生き方に迷ったとき私を支え、活力となってくれた本をたくさんご紹介していきます。

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