- 2024年元日に起きた「令和6年能登半島地震」の被害に合われた方々に、心からお見舞い申し上げます。
スティーブン・R・コヴィー著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』をご紹介します。
本書は販売部数、4000万部の大ベストセラーなので、ご存じの方も多いかもしれません。
初版の発行は1989年 (日本では1996年) ですが、今でも本屋さんに平積みにされているのをよく見かけます。
私は社会人になって間もない頃にこの作品と出会い、世界の見え方が大きく変った経験をしています。
「人生のバイブル」的に何度も繰り返し読んだ時期もありました。
あれから10年以上が経ち、母親となって価値観がけっこう変わった現在でも、久しぶりにページを開いてみると、今まで気にも留めなかったページに惹きつけられたりして…、
何年もかけて読み続けていきたい名著です。
この記事では、本書の序盤で取り上げられる「パラダイムシフト」「インサイド・アウト」「影響の和・関心の和」に絞って解説をしていきたいと思います。
- 一度きりの人生を充実させたい
- あの人さえいなければ…、環境さえ違えば…と思ってしまうことがある
- なんとかして今の自分を変えたい
という方におすすめの一冊です。
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『7つの習慣』はどんな本?
本題に入る前に『7つの習慣が』どういった作品なのか、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
ジャンルとしては自己啓発本ですが、本屋さんではビジネス書の棚に並んでいることも多いです。
- 第1~3の習慣「私的成功」
- 第4~6の習慣「公的成功」
- 第7の習慣「最新再生」
と大きく3つのパートに分かれていて、ステップを踏むように人生の根本を変える「習慣」を身に着けていける構成になっています。
目次を見ると、
- 第1の習慣 主体的である
- 第2の習慣 終わりを思い描くことから始める
- 第3の習慣 最優先事項を優先する
- 第4の習慣 Win-Winを考える
- 第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される
- 第6の習慣 シナジーを創り出す
- 第7の習慣 刃を研ぐ
となっていて、それぞれの習慣の中身がかなり深い。世界中の人々に愛され、読み継がれているのも納得できる内容です。
しかしこの作品、500ページ以上もある超大作のため、通読しようとすると結構な気合いが必要です。
私も興味を持って本書を手に取ったのはいいものの、そのあまりの分厚さに怖気づいたことを覚えています。
そこで、まずは解説本を読んでみるのがおすすめです。
『13歳から分かる!7つの習慣 自分を変えるレッスン』は、「7つの習慣」のエッセンスが、やさしい言葉でコンパクトにまとめられています。
『まんがで分かる 7つの習慣』も、エピソードによって本書の内容が抵抗感なく頭に入ってくると思います。
パラダイムシフト ―私たちは、あるがままの世界を見ている
次の場面を想像してみてください。
目の前にある図形があります。一人はそれをみて「これは、丸だ」と言い張り、もう一人は「いや、これはどう見ても三角形だ」と譲りません。
同じ図形を見ているのに、なぜ意見が合わないのでしょうか?
……実はこの図形、平面ではなく立体、円錐だったというオチです。
このようにまったく同じモノでも、どの角度から、どういう視点で見るかによって、まったく違った形に見えることがあります。
これは、私達の日常を取り巻く様々なレベルの出来事に当てはまると思います。
本書では、だまし絵を使った認知実験を例にしてそれを説明します。
一方のグループには「若い女性」の絵を見せ、もう一方のグループには「老婆」の絵を見せます。その後「2つの絵を合成した絵」を「何に見えるか?」と問いました。
先に「若い女性」の絵を見せられたグループは、大多数が「若い女性」に見えると答え、逆に「老婆」を見せられたグループは「老婆」に見えると答えました。
まず、経験による条件づけが、私たちのものの見方(パラダイム)に強い影響を与えていることが分かる。わずか一〇秒の条件づけでさえ、見え方にあれほど影響するのだから、これまでの人生でたたきこまれてきた条件付けの影響たるや、どれほどだろうか。家庭、学校、教会、職場、友人関係、職業団体、そして個人主義などの社会通念等々、私たちの生活には多くの影響力が作用している。そのすべてが無意識のうちに私たちに影響を与え、私たちの頭の中の地図、ものの見方、すなわちパラダイムを形成しているのである。
スティーブン・R・コヴィー著/フランクリン・コヴィー・ジャパン訳『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版(2013年)
ものの見方は、経験やその人が暮らす社会の影響を強く受けます。
著者はさらに、こう続けます。
誰しも、自分は物事をあるがままに、客観的に見ていると思いがちである。だが実際はそうではない。私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件付けされた世界を見ているのである。
スティーブン・R・コヴィー著/フランクリン・コヴィー・ジャパン訳『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版(2013年)
つまり、私たちは自分の周りの世界を、自分のパラダイム(ものの見方)でもって、自分の見たいように見ている。
“自分自身の経験のレンズ”を通して世界を見ていると言うのです。
相手と意見が合わないと、瞬間的に相手が間違っていると思うのは、自分のパラダイムが正しいと無意識に信じているからです。
自分の頭の中にある地図、思い込み、つまり基本的なパラダイムと、それによって受ける影響の程度を自覚し、理解するほど、自分のパラダイムに対して責任を持てるようになる。自分のパラダイムを見つめ、現実に擦り合わせ、他の人の意見に耳を傾け、その人のパラダイムを受け入れる。その結果、はるかに客観的で、より大きな絵が見えてくるのである。
スティーブン・R・コヴィー著/フランクリン・コヴィー・ジャパン訳『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版(2013年)
自分のパラダイムとはまったく違った見方ができるようになった時、それを「パラダイムシフト」と呼びます。
私たちはしばしば、人生の危機に直面した時や、新しい役割を引き受けるとき (夫や妻、親、管理職、リーダーなど)、考え方が根本から変化するパラダイムシフトを経験します。
自分自身に大きな変化を望むのであれば、自分の思考や行動の土台とっているパラダイムを見直し、変えていく必要があるのです。
インサイド・アウト ―変化を望むなら、自分から
後輩の失礼な態度が気に障る、夫が家事を手伝ってくれない、子どもが言うことを聞かない…など、誰しも誰かや何かに不満を持ってしまうことはあると思います。
でも、このようなときに
「あの人とは気が合わない」
「もっと、こうしてくれればいいのに」
とグチをこぼしたところで、その場はちょっとスッキリするかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。
ではどうすればいいのか?
著者は「インサイド・アウト」すべては自分からだといいます。
インサイド・アウトとは、一言で言えば、自分自身の内面から始めるという意味である。内面のもっと奥深くにあるパラダイム、人格、動機を見つめることから始めるのである。
スティーブン・R・コヴィー著/フランクリン・コヴィー・ジャパン訳『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』キングベアー出版(2013年)
逆に、「アウトサイド・イン」は、「あなたが (周りの環境) が変わってくれれば、自分は変わる」という受け身の姿勢です。
私たちは、自分にとって不都合な状況を他人や環境のせいにしがちなところがあります。
自分がうまくいかない理由を、手伝ってくれないパートナーのせい、言う事を聞かない子どものせい、融通のきかない上司のせい、生意気な後輩のせい、会社のせい、国のせい、時代のせい…と、誰かのせいにするのは簡単です。
しかし、相手に変わって欲しい、環境さえ違えばと願ってもおそらく何も変わりません。
相手の言動や周りの環境は、自分の意思でコントロールできないからです。
何かを変えたいと願うなら、まずは自分自身から変化を起こしていく必要があります。
そうは言っても、
「相手が悪いのに、自分の方が変わらなければいけないのは納得できない」
と思われるかもしれません。
ですが、その「相手が悪い」という見方そのものが、自分にとって都合のいいものになっている可能性があります (先ほどのパラダイムの話しです)。
例えば、
「子どものことを想って、勉強するように言っているのに、ゲームばっかり…いい加減にして。」
と思っている母親がいたとします。
でも、子どもの方は学校の人間関係でひどく疲れていて、しんどい現実から逃れるためにゲームをしているのかもしれません。
となると、自分の気持ちを理解してくれず一方的に「勉強しなさい」と言ってくる母親は、うっとうしい存在でしかありません。
ここで「インサイド・アウト」の考え方をすることができれば、
「私 (母親) の伝え方に問題があって、本当に伝えたいことがきちんと子どもに届いていないのかも…」
と、自分自身に原因を見出すことができるかもしれません。
そうしたら「伝え方を工夫してみよう」とか「まずは子どもの話しをきちんと聴こう」といった対応策が出てくるはずです。
ここで注意しておきたいことは、変えられるのは常に自分の行動だけで、結果をコントロールすることはできない点です。
先の例で「子どもの話しをきちんと聴こう」と態度を改めたとしても、それで状況が必ずしも好転するわけではありません。
「うるせぇ」と一蹴されてしまうことも十分あり得ます。
それでも、何かを変えたいと思ったときに自分にできることは、常に自分から働きかけることなのです。
インサイド・アウトは、単に「自分に厳しい」のではなく、状況を望ましい方向に変えていく、至極現実的な考え方だと思います。
「影響の和」「関心の和」
今、何か気がかりなことはありますか?
- 異動してきた同僚とソリが合わない
- 義母に言われたあの一言がひっかかる
- 年末年始で食べ過ぎて、ちょっと太っちゃったかも…
- 明日は楽しみにしていた屋外イベントなのに天気予報は雨…
など…色々なことが思い浮かぶと思います。
さて、これらの例の中で「影響の和」にあるのはどれか考えていきます。
「影響の和」というのは、“自分が影響を及ぼせる物事”のことです。
例えば、「食べ過ぎて太ってしまった」のであれば、食事量を控えたり、運動したり、なんらかの行動を起こすことで減量できるかもしれません。
しかし、「なんだかソリの合わない同僚」の性格を変えることや「義母に言われたあの一言」を無かったことにすること、お天気を晴れにすることは不可能です。
これらは「関心の和」の出来事―「関心はあるけれど、基本的には自分の行動で影響を及ぼすことができない」ことがらです。
私たちは、「関心の和」の出来事にとらわれ過ぎているのだと著者は言います。
もっと「影響の和」―“自分が影響を及ぼせる物事”に集中すべきだそうです。
私たちが直面する問題は大きく3つに分けられます。
- 直接的にコントロールできる問題―自分の行動に関わる問題:影響の和
- 間接的にコントロールできる問題―他者の行動に関わる問題
- コントロールできない問題―過去の出来事や動かせない現実:関心の和
例えば、お天気は「コントロールできない問題」であっても、それを受け入れた上で「悪天候のイベントを楽しむためにどんな準備をするか」は自分の意思で決められます。
「義母に言われた一言 (過去の出来事)」に悩んでいても、「考えても仕方ないから気にしない」と吹っ切れてしまうこともできます。
このように、「直接的にコントロールできる問題」と「間接的にコントロールできる問題」、「コントロールできない問題」を区別して考えると、「そもそも、これは私が悩むべき問題なのか、悩んだところで意味がないのではないか」と気付くことができます。
おわりに
今回は、スティーブン・R・コヴィー著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』をご紹介しました。
本書の内容は「自分に厳しい」と思います。
なにか問題が起ったとき、自分のものの見方を疑い、自分の行動を変えていくことを基本姿勢としているからです。
この理論を周りの人に振りかざすと
「うまくいかないのは、自己責任だ!」
となりかねないため、注意が必要ですが、自分自身に対して向けるのであれば成長できるチャンスになると思います。
自戒もこめて言いますが、基本的に人は自分に甘いです。
この本を読むと背筋がシャキッとして、前向きになれるので、新年・新年度といったタイミングで読んでみるのもおすすめです。
興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。
この記事が、なにか少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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