谷本真由美著『日本人が知らない 世界標準の働き方』【解説・感想】

本の紹介

今回は、@May_Romaこと谷本真由美さんが書かれた『日本人が知らない 世界標準の働き方』をご紹介します。

谷本さんはITの専門家として “ITおよび通信市場や規制の調査” などを手掛けており、X (旧Twitter)上では@May_Romaとして歯に衣着せぬツイートで人気です。

本書は、2015年に発刊された『日本人の働き方の9割がヤバい件について』を加筆修正し、改題したものになります。

日本では当たり前とされている働き方や企業文化に異を唱え、数々の研究やデータを交えながらその理由を述べていきます。

本書は次のような方にお勧めです。

  • 世界と日本の働き方にどのような違いがあるのか知りたい。
  • 勤めている会社や日本社会に対して「閉塞感」がある。
  • 激変する世界で、自分だけでなく子ども達の将来が心配。

世界レベルで変化が起きていることを知り、日本の行く末を予想した上で、私たち個人がどのような選択をするべきかのヒントとなる一冊です。

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「働き方」に悩む日本人

日本人が「仕事」を心配するようになったきた様子は、ビジネス書のベストセラーを見るとよく分かるといいます。

著者曰く、今売れている本は、“とにかく早く、簡単に自分の能力を高めたい”という切羽詰まった感じものが多いのだそうです。

景気が良かった頃は外国のことを知って、ビジネスに役立てようと考える人が少なくありませんでしたが、今はビジネス書の体裁をした自己啓発本の売れ行きが好調です。

それは、自分に自信がなくなっている人が多いことの裏返しとも言えるかもしれません。

なぜ私たちはこんなにも「働き方」に悩んでいるのか?

著者は、「日本人はあることに気付いていないからだ」と主張します。

(前略) 今の人は、社会への怒りや不満を「自分」に向けています。「自分」がダメだから今すぐ変わりたい、優れた人のことを真似して「自分」が変われば幸せになれる、就職できないのは「自分」が無能だから、「自分」が学べばなんとかなる……。 しかし本当は、「自分」がダメな理由、仕事で悩む理由は、今の自分が置かれた状況を作っている人や、それを支える「仕組み」なのです。つまり、自分ではどうにもならないこと=「外部要因」が、自分の悩みの原因なのです

谷本真由美著『日本人が知らない世界標準の働き方』株式会社PHPエディターズ・グループ(2021年)※以下、引用はすべて本書より

昔は、不満のある労働者は労働争議を起こしていました。つまりは、「怒り」が外に向けられていたのです。

ですが、現代では「怒り」が内側、つまり自分自身に向いてしまっています。

日本人は真面目で「向上心がありすぎる」から悩んでしまうのです。

では、“今の自分が置かれている状況を作っている人や、それを支える「仕組み」=「外部要因」”とはなんなのでしょうか?

日本のおかしな「働き方」

おかしな仕組みとして著者が厳しく批判しているのは、「年功序列」「終身雇用制度」です。

「年功序列」と「終身雇用制度」はリスク

日本の場合は同じ企業に長く務めることはポジティブに捉えられ、逆に転職を繰り返すことは「忠誠心がない」「協調性がない」とネガティブなレッテルを張られてしまうことが多いように思います。

ですが、

“その人が何を生み出すかよりも、会社というコニュニティの一員になり、長期間、その組織に対して忠誠を誓うことを重視する”

終身雇用制の働き方は、組織や働く人の新陳代謝を阻んでおり、変化の激しい時代においてはリスクでしかないと著者は批判します。

同じく年功序列賃金は、従業員がその会社に長期間勤務することが前提になっている賃金体系です。

英語圏でそのような賃金体系があるのは、政府や学校などの公共機関や一部の製造業のみです。

「転職が当たり前」とう環境では、能力によって各自の報酬に差がつかない年功序列の賃金体系は、不満や不公平感を生みだしてしまうのです。

世界では「年功序列」は差別?

世界では「年功上列は差別では?」という見方も出てきています。

イギリスの公的機関は年功序列賃金を採用している場合がありますが、それに対して訴えを起こすケースが目立っているそうです。

 働いている機関や年齢で報酬に差をつけることは、転職してきた人や、出産や家族の世話などでキャリアを中断することが多く、男性に比べて就労年数が短くなりがちな女性に対する差別であるというのが訴えの内容です。さらに、イギリスだけではなく、欧州では同一労働同一賃金という、同じ仕事であれば同じ報酬をもらう、という考え方が一般的なので、仕事の内容や能力とまったく関係がない年功序列は、同じく労働者差別に当たるという考え方が出てきています。

空気を読んでいるから革新が起きない

「年功序列」と「終身雇用制度」と同じく、著者が問題視しているのが、日本企業の中にある「空気」の存在です。

日本の若者の中には、従来のように週末や就業時間を潰してまで会社の中で濃い人間関係を作りたいと思わない人が増えています。

家庭生活や育児に参加する男性も増えてきましたし、家庭を顧みないで会社がらみのお付き合いに熱心なことは、批判の対象にすらなります。

ですが、そんな若い人の価値観の変化を、中高年は必ずしも前向きに捉えていません。

つまり、若い人と中高年の間で働き方やライフスタイルに世代間ギャップがあるのです。

 働き方の仕組みやルールを決めるのは、意思決定権のある中高年以上の世代です。在宅勤務が認められない、男性の育児休暇が増えない、サービス残業を強要する職場に対する罰則がゆるいというのは、企業文化の問題というよりも、世代間対立の問題なのかもしれません。

「新しい働き方をしたい」と思っても、それをしとしない職場の「空気」があるということです。

こうした職場内のコニュニケーションの問題は、ビジネスの根幹の部分にも関わります。

知識産業の重要性が増している現代では、「人と違うことを思いつくこと」が強みになりますが、日本的な企業文化の中では、それが評価されないこともしばしばです。

「出る杭は打たれる」という諺もありますが、人と違う考え方をしたり、何か斬新なことをやろうとしたりすると、周囲からの圧力で抑えられてしまうのです。

こうした「空気」を読み取っているからこそ、働くことに悩んでしまうといいます。

「渡り鳥」になれ!将来に残る仕事とは?

日本の雇用慣行や企業文化についてみてきましたが、働き方の激変は世界レベルで起起きています。具体的には、

  • 多国籍企業の海外事業が拡大し、付加価値の低い仕事が海外に外注されるようになったこと
  • 情報通信技術の進化により、自分がどこにいても仕事を貰えるようになったこと
  • 限られた期間だけ会社のような形態を作って仕事をすることが可能になったこと

などが挙げられます。

 このように、働く場所が関係なくなっているので、先進国の企業では、わざわざ社員を抱える必要が薄れています。多くの組織では、ごく一部の、意思決定をする幹部や、「富を生み出す仕組み」を考える人だけを残し、あとは、短期的に雇用したり、海外の人を雇う、という傾向が高まっています。必要な人材は置いておき、景気の動向により、部署ごとレイオフしたり、海外に移動したりしてしまうのです。

このような世界レベルの変化を、怖がってばかりもいられません。

将来の先行きが不安定な現代では、短期的でなく5年、10年後の将来をある程度予測して仕事を選ぶ必要があります。

著者は「渡り鳥」になれといいます。

 現代の人間にとっての「エサ」である仕事が、生存を脅かすような状態なのであれば、移動するのも当たり前だといえるでしょう。グローバルゼーションが進む中で、沈下していく仕事から、将来より多くの「エサ」が得られそうな仕事に移動するのは、生き延びるための生存戦略です

では、将来「エサ」が得られそうな仕事にはどんなものがあるでしょうか?

グローバリゼーションが進む中で生き残れる仕事

職業の需給予測をするにあたって、著者が勧めている情報源は、

“(1)数年にわたって仕事の動向を「定点観測」(定期的に観測する)しているレポートと、(2)数値データを収集して調査研究した学術研究”です。

『日本人が知らない 世界の働き方』では、以下の3つのカテゴリーの職種が勧められていました。

  • 数値やデータを扱う仕事
  • IT関連の仕事
  • 医療関係の専門職

つまり、専門性が高く、知識産業や医療などの付加価値の高いサービス業は今後も伸びる可能性が高いということです。

来るべき時代に備えるために

将来性の高い仕事についてみてきましたが、当然ながら人生は仕事だけで成り立っているわけではありません。

現在多くの人が直面している変化は、単に仕事の仕組みの変化ではなく、世界中を巻き込む大きな変化の一部です。日本式雇用の仕組みが変わりつつあるだけなのではなく、ものやサービスの消費の仕方、お金の流れ、豊かになるところと衰えるところ、紛争が起こる場所など、様々なことが変化しているのです。

あらゆることを事細かに想定していても、予期せぬ出来事によってあっけなく崩れ去ってしまう可能性が高いのが現代です。

そんな中、私たちがやるべきことは

“自分の生活の防衛”です。

著者は、危機に直面した時にそれをチャンスと捉えること、臨機応変に対応すること、リスクをとることが重要でだと述べています。

また、生活の防衛に当たってしっかりと考えておきたいことが「お金の問題」です。

これに関しては、「お金持ちのライフスタイル」が参考になると言います。

お金持ちのライフスタイルに学ぶ

仮に手もとに一生遊んで暮らしていけるだけのお金があれば、嫌な上司の元で働き続ける人はいないでしょう。

働き方に悩む人も、お金があれば働くことに関する悩みの大部分が解消するはずです。

では、どうすればお金に余裕ができるのか? お金持ちには以下の特徴があるそうです。

  • 家族や友人との交流の時間を多くとっている。
  • 資産管理と投資、節税方法の勉強をしている。
  • 付加価値を生むものにお金を使い、「買い物」=消費にお金を使わない。

付加価値を生むものにお金を使うということは、「投資」的な観点から購入するものを決めるということです。

例として出ていたのは、家具です。

安い家具は10年もすれば古ぼけてしまい、その価値は下がってしまいますが、アンティ-ク家具を手入れしながら使うのであれば、何年経っても価値は落ちないどころか、むしろ価値が高まっていく場合すらあります。

「投資」に関しては、短期的に利益を得ようとすると「投機」=ギャンブルになってしまうので、あくまで株式や不動産などの長期的な成長を考慮してお金を投じることが大切です。

おわりに

今回は、@May_Romaこと谷本真由美さんが書かれた『日本人が知らない 世界標準の働き方』をご紹介しました。

日本に生まれ、日本で育ち、日本で長らく働いていると、会社のおかしな仕組みに違和感を持ったとしても「まぁ、こんなもんか」と見過ごしてしまいがちです。

海外の事情を知ることは、普段当たり前に受け入れている「環境」にきちんと疑問を持つことに繋がると思います。

グローバル化がますます進んで行く中で、日本の働き方も「世界標準」に近づいていくでしょう。

その良し悪しは別として、「そういう未来も想定内」と心づもりをしておけば、必要以上に変化を怖がったり、未来を悲観したりしなくて済みそうです。

興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手にとってみて下さい。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

プロフィール
ひなた

・1989年生まれ
・2児(5才・7才)のママ
・リハビリの専門職
・趣味は読書&散歩

このブログでは、子育てや仕事、生き方に迷ったとき私を支え、活力となってくれた本をたくさんご紹介していきます。

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