今回は、絵本『こぐまちゃんシリーズ』をご紹介します。
「日本の子どもたちに、日本人の作家による、はじめてであう絵本を」
というコンセプトのもと1970年に発行されてから、世代を超えて多くの人に愛されてきた絵本です。
- 丸や三角といった、小さな子でも認識しやすいシンプルな形の絵
- パッと目を引く鮮やかな色彩
- リズミカルで美しい言葉
など、たくさんの魅力が詰まったシリーズとなっています。
この記事では、『こぐまちゃんシリーズ』の基本情報、全18タイトルの中から特におすすめしたい作品を3つ厳選してご紹介。
また、『こぐまちゃんシリーズ』に込められた作者の想い・制作秘話についても書いていきます。
『こぐまちゃんシリーズ』基本情報
『こぐまちゃんシリーズ』は大きく2種類に分けられていて、対象年齢やページ数、内容がそれぞれ異なります。
お子さんの年齢や興味の対象によって選べるといいですね。
『はじめてのこぐまちゃん』(全3作)
- 対象年齢 :0歳から2歳ごろまで
- ページ数 :12頁
- 作者 :わかやまけん
- 出版社 :こぐま社
- 内容・特徴:「こぐまちゃん絵本」の赤ちゃん版。小型のボードブックで、一つの絵に一つの単語が出てくる。本の角も丸くなっているので、赤ちゃんが手にとっても安心。
『こぐまちゃんシリーズ』(全15作)
- 対象年齢 :0歳から3歳ごろまで
- ページ数 :22頁
- 作者 :わかやまけん
- 出版社 :こぐま社
- 内容・特徴:子ども達にとって身近な日常生活をテーマにした物語。
どちらのシリーズも、対象年齢は0才から。
「はじめてであう絵本」として赤ちゃんのころから楽しめます。
『はじめてのこぐまちゃんシリーズ』は、一つのページに単語が一つなので、単語の理解を促すのに役立ちます。
一方の『こぐまちゃんシリーズ』は、「おはよう」や「おやすみ」、「ボール遊び」に「買い物」といった子ども達にとって身近なテーマを扱った物語です。
文字も少なめなので、はじめての「ものがたり絵本」として最適です。
『こぐまちゃんシリーズ』作品一覧(全18作)
『はじめてのこぐまちゃんシリーズ』を合わせると、なんと18タイトルも!
『はじめてのこぐまちゃん』(全3作)
- 「たのしい いちにち」
- 「じどうしゃ」
- 「どうぶつ」
『こぐまちゃんシリーズ』(全15作)
- 「こぐまちゃん おはよう」
- 「こぐまちゃんとぼーる」
- 「こぐまちゃんとどうぶつえん」
- 「こぐまちゃんのうんてんしゅ」
- 「こぐまちゃんのみずあそび」
- 「こぐまちゃん いたいいたい」
- 「こぐまちゃんとふうせん」
- 「しろくまちゃんのほっとけーき」
- 「こぐまちゃん ありがとう」
- 「こぐまちゃんのどろあそび」
- 「しろくまちゃん ぱんかいに」
- 「こぐまちゃん おやすみ」
- 「さよなら さんかく」
- 「ひらいた ひらいた」
- 「たんじょうび おめでとう」
これだけあると迷ってしまいますよね。
ですが、どれを選んでも基本的に“ハズレ”がないのも、『こぐまちゃんシリーズ』のいいところです。
『こぐまちゃんシリーズ』おすすめタイトル3選
どれも素敵な作品なのですが、特におすすめしたいタイトルを3作ご紹介します。
『しろくまちゃんのほっとけーき』
![](https://hinatanohondana.com/wp-content/uploads/2024/05/29298904_s.jpg)
『こぐまちゃんシリーズ』で一番売れている作品です。
しろくまちゃんがホットケーキづくりに挑戦します。
あらすじ
しろくまちゃんが、お母さんと一緒にホットケーキを作ります。
フライパン、ボールといった道具を揃えて、たまご、牛乳、小麦粉といった材料を用意します。
材料を混ぜるのが難しくて、台所を汚してしまうけれど、それもご愛嬌。
フライパンの中でホットケーキがだんだん焼けていく様を、まだかまだかと見るのも楽しい時間。
完成したら仲良く、こぐまちゃんと一緒にいただきます。
おすすめポイント
なんといっても、『しろくまちゃんのほっとけーき』の魅力は、
絵本の中でホットケーキを作る過程をしろくまちゃんと一緒に追体験できることです。
ボールで “ごとごと” 材料を混ぜ合わせ、フライパンの上からおたまで “ぽたあん” と生地を流しいれる真似をしたり、
絵本の中の擬音に合わせて、ホットケーキが焼ける様子を想像して、実際に “くんくん” してみたり。
「まだかな、まだかな」
と子ども達は絵本の世界の中で、ホットケーキが焼けるのを本当に楽しみにしている様子でした。
この本を読むと我が家では、ほぼ100%の確立で
「私 (僕) もホットケーキ作りたい!」
となるため、おやすみの日に一緒にホットケーキを作ったのもいい思い出です。
作者のねらい
ホットケーキの絵本をつくりながら、こどもが開いて歓喜する姿を想像しました。 それは、①大きなホットケーキを食べるうれしさ ➁ホットケーキができる過程への興味 ③自分でつくるということへの魅力などです。
わかやまけん『こぐまちゃんのほっとけーき』こぐま社(1972年)・「しろくまちゃんのほっとけーき」のねらい (森 比左志)
最後、完成したホットケーキをこぐまちゃんと一緒に分け合って食べるのですが、これは「①大きなホットケーキを食べるうれしさ」の表現です。
「③自分でつくるということへの魅力」を伝えるために、調理前の仕度や道具、材料を揃える過程も描かれています。
食べた後のお皿洗いまで自分たちでやるのも、「片付けも料理のうち」と作者が考えていたからかもしれません。
『たんじょうび おめでとう』
![](https://hinatanohondana.com/wp-content/uploads/2024/05/22321080_s.jpg)
こぐまちゃんの3才のお誕生日をお祝いするお話です。
私は実際に、娘の3才の誕生日にこの本をプレゼントして、とても喜ばれました。
あらすじ
今日は、こぐまちゃんのお誕生日。
“ぼく 3さいに なったんだよ”
3才になったこぐまちゃんは、誇らしげ。
はみがきも、お着替えも、お片付けも、なんでも一人でできるよ。
しろくまちゃんと公園にいって、高い鉄棒にも挑戦!
誕生日のお祝いには、しろくまちゃんも来てくれた。
お母さんが焼いた大きなケーキに大きなプレゼント。
“こぐまちゃん 3さいのたんじょうび おめでとう”
おすすめポイント
3歳になって少しお兄さんになったこぐまちゃん。
「なんでも一人でできるよ」とアピールする姿が微笑ましいです。
でも、ボタンかけは難しくお母さんに手伝ってもらったり、鉄棒がまだ上手にできないのもまたリアルな3歳児。
『たんじょうび おめでとう』で見どころなのが、プレゼントを開けるシーン。
見開きいっぱいに、たくさんのプレゼントが描かれていて、
「わーいっぱい、すごーい。」
と娘はまるで自分がプレゼントをもらったかのように喜んでいました。
子ども達の身近にある様々なモノが描かれていて、はじっこから一ずつ指さしながら
「これは、とりさん! これ、クレヨン!」
と得意げに言い当てていくのがとても楽しそうでした。
『こくまちゃんのみずあそび』
![](https://hinatanohondana.com/wp-content/uploads/2024/05/28153916_s.jpg)
こぐまちゃんとしろくまちゃんが水遊びをします。
どんどんと遊びがやんちゃに発展していく様子が楽しく、ワクワクするお話です。
あらすじ
はなに水をあげるのはこぐまちゃんの仕事。
ちょっとしたいたずら心から、じょうろを使って金魚さんやアリさんにお水をあげてみました。
その内、しろくまちゃんがホースを持って来ます。2人で水のかけ合いに発展。
“おもしろい おもしろい つめたい つめたい”
さらにはホースの水でできた “かわ(川)” に入って、“はっぱの ぼーと”で遊びます。
最後にはどろんこになってしまったけれど、とっても楽しかったね。
おすすめポイント
最初はお花に水をあげることからはじまり、だんだんと遊びがエスカレート。
最終的にどろんこになる辺りが、子どもらしいなと思います。
この作品を読むと「なかなかこんな風に、子ども達を遊ばせてあげていないな」と反省します。
水たまりに入る程度でも、靴が汚れることを見越して「入っちゃダメ!」と静止してしまいがちです。
『こぐまちゃんのみずあそび』は、単純に親子で読んで楽しいというだけでなく、
「子どもにとっての遊びとは何か?」
を親が改めて考え直すきっかけになる絵本だと思います。
作者のねらい
今日の子どもに、ほんとの遊びがなくなったといわれます。今の子どもは、いたずらをとりあげられているともいわれます。
(中略) いたずらは、子どもが自分からやりたいと思ってやる活動です。自主的なのです。親が指図をするものでなく、親の目をかいくぐってやります。行動の芽として大事な点です。
わかやまけん『こぐまちゃんのみずあそび』こぐま社(1971年)・「こぐまちゃんのみずあそびのねらい」<森久保仙太郎>※森比左志
『こぐまちゃんのみずあそび』が発行されたのは1971年ですが、上に書いてあることは現代にこそ必要な視点ではないでしょうか?
さらに作者は次のようにも言います。
(中略) こぐまちゃんの水あそびは、シャワーを洗面器でうけて音をおもしろがるようなユーモアがあります。水をかけたアリを船にのせる思いやりがあります。“いたずら”の中にも、明るさや、こまやかさのあることを見せてください。
『こぐまちゃん絵本』への作者の 想い・制作秘話
『こぐまちゃんシリーズ』の制作には、なみなみならぬ情熱が込められています。
各分野のプロが、多くの時間と労力をかけて大切に作った絵本です。
このことを知っていれば、お子さんに与えるときも安心ですし『こぐまちゃんシリーズ』がもっと好きになるはずです。
(※参考URL:https://www.kogumasha.co.jp/kogumachan)
めずらしい「集団制作」
『こぐまちゃんシリーズ』は、実は「画家」「歌人」「劇作家」「編集者」という4人のプロフェッショナルによる集団制作になっています。
シリーズのテーマ・原案・文章を担当したのは、なんとあの「はらぺこあおむし」の訳者でもある森比左志さん。
ストーリー展開や言葉選びに至るまで、4人全員が納得し、合格点を出さないと出版されないといいます。
『こぐまちゃんシリーズ』は、まさに4人の知恵と技術、情熱の結晶ともいえますね。
- 絵 :若山憲
- 原案・文章 :森比左志
- ストーリー展開:和田義臣
- 編集者 :佐藤英和
鮮やかな色彩には秘密があった
『こぐまちゃんシリーズ』と言えば、特長のひとつがその色彩。
通常のカラー印刷ではブラック・シアン(明るい青)・マゼンダ(紫がかった濃いピンク)・黄色を組合せて色を表現します。
ですが『こぐまちゃんシリーズ』の場合は、特別につくられた6色(オレンジ・黄色・青・グレー・緑・黒)の「こぐまちゃんインク」を使って印刷しているのだそうです。
それにより、パッと目を引く鮮やかな色彩が生まれます。
手間もコストもかかる方法ですが「幼い子ども達に美しい色に出会って欲しい」という作者の願いが込められています。
こだわり抜かれた「ことば」
ぽたあん どろどろ ぴちぴちぴち ぷつぷつ やけたかな まあだまだ
しゅっ ぺたん ふくふく くんくん
ぽいっ はい できあがり できた できた ほかほかの ほっとけーき
わかやまけん『こぐまちゃんのほっとけーき』こぐま社(1972年)
先にもご紹介した『しろくまちゃんのほっとけーき』という作品の中で、しろくまちゃんとお母さんがホットケーキを焼く場面です。
言葉だけでも、ホットケーキがどういう状態なのか、どの工程にあるのか、なんとなくイメージできませんか?
上の擬音は、社内で実際に七輪!を使ってホットケーキを焼いてみて
「音が聞こえる!」
という発見から生まれたそうです。
美しくリズミカルな日本語を選び抜いているからこそ、「ことば」から情景を思い描くことができ、絵本の世界にスッと引き込まれていくのだと思います。
おまけ|『こぐまちゃんシリーズ』は出産祝いに最適
出産祝い、何にしようか悩んだときに「絵本」を贈るというのも素敵です。
『こぐまちゃんシリーズ』は対象年齢が0才からなので、赤ちゃんの内から楽しむことができます。
『はじめてのこぐまちゃん(全3冊)』は丈夫な厚紙で、本の角も丸くなっているで、赤ちゃんが手にとっても安心です。
「しろくまちゃんのほっとけーき夢のふくふくセット」はとにかく可愛くて、自分用に購入しようか迷ったくらいです。
おわりに
今回は、絵本『こぐまちゃんシリーズ』をご紹介しました。
以前から好きな絵本でしたが、この記事を書くに当たって、自分が持っていないタイトルを図書館でかりて読み、制作秘話などを調べたことで『こぐまちゃんシリーズ』がもっと好きになりました。
ぜひ実際に手にとって、お子さんと一緒に楽しんでみてください。
この記事が何かお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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