紫苑 著『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』【解説・感想】

生き方、働き方

今回は、紫苑しおん著『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』をご紹介します。

「月5万円で生活って、本当にできるの?」

と一瞬うたがってしまいますが、著者の紫苑さんの暮らしは、慎ましいながらも日々の楽しみに満ちています。

本書を読むと、お金があまりなくても、生活を楽しむ知恵と行動力さえあれば、豊かに生きていけると気づかされます。

お金があるに越したことはありませんが、「無かったら無かったで、どうにかなると思えることは、一つの安心に繋がるのではないでしょうか。

本書は、次のような方におすすめです。

  • お金はあまりないけれど、楽しく充実した生活を送りたい
  • 具体的な「楽しい節約生活」のノウハウを知りたい
  • 年金月5万円の生活に興味がある

この記事では、『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』がどういった本なのが大枠を掴んだ上で、私が感銘をうけた部分を抜粋してご紹介します。

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本書はこんな本

著者の紫苑さんは、本書が発行された2022年の時点で71歳。

「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」というブログを書いていらっしゃいます。

本書で語られている節約生活は、イキイキとして楽しそうなのですが、そこに至るまでには苦労も多かったようです。

フリーランスの仕事で収入が安定しない中、母子家庭で二人の子どもを育てあげました。長い間、漠然とした不安の中で暮らしてきたといいます。

64歳で築40年の中古住宅を購入したことで貯金がなくなり、細々と続けていた仕事もコロナによって減ってしまう…。

本書では、もともとお金について考えることが苦手だった著者が、人生で初めてお金と向き合い、「生活」していくために行った様々な工夫 ―美味しく健康にいい一万円レシピ・リメイクおしゃれ・百均DIY― などが紹介されています。

具体的な工夫の数々もおもしろいのですが、節約生活を通して、著者の考え方や価値観がどのように変わっていったのかも書かれていて、個人的にはこちらの方に惹かれました。

節約は知的な行為

「高い食材を使えば、美味しい料理を作れるのは当たり前」と言った料理家さんもいました。 洋服も高級ブランドを身に着ければ、特にセンスが優れていなくても「それなり」になります。 (中略) 料理だけではなく、ファッションもインテリアも、つまり衣食住という、人が生きる上での基本的なことをどんなふうにやり繰りするのか。そこにその人の知性が見え隠れしているのではないかと思います。

紫苑著『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』大和書房(2022)

プチプラ生活を始めると、頭は使うは、身体は使うはで、心身をフル回転させる必要があったといいます。

限られたお金の中で、健康にいい食事をしようとすれば「安くて栄養バランスのよいメニュー」を考えて、買い物をし、料理をしなければなりません。

築40年の中古住宅で快適に過ごすためには、家具の配置を変えてみたり、100円グッズでDIYしてみたりと、様々な工夫が必要になりました。

節約生活を楽しむためには「栄養学」「料理」「お金の使い方」「インテリア」「DIY」「洋裁」といった幅広い知識・スキルが必要です。

節約というクリエイティブな活動では、その人の「知性」が問われるのだと思いました。

自分軸と節約

 同年代の方々が「10万円、20万円の年金をもらっている。いいなあ」と考えた途端、過去の私の「だらしなさ」「お金への無知」が甦ってきます。 (中略) 自分を責め、「どうしてもっとお金のことを考えなかったの!」「なぜもっと年金の勉強をしなかったの!」「バカじゃないの」と卑下し、投げやりになる……。(中略)  そうならないためには、もう周りのことを考えずに「自分勝手」に、いえ「自分軸」でいくしかありません。

紫苑著『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』大和書房(2022)

「自分軸がある」とは、自分は何が好きで、何を優先したいのか分かった上で、他人の顔色や評価を気にせず「自分はこうしたい」を貫けることではないでしょうか。

著者のライフスタイルは「自分軸」がはっきりしているように思えますが、

”「そうするしか方法がない」「ほかの人のことを考えていたら生きていけない」”

という状況が根底にあったようです。

他の誰かの年金額や生活ぶりと比べて落ち込んだり、過去の自分を責めたりしても意味がない。

それより、「手もとにある月5万円でどうやったら充実して生きられるか」を考える。

その結果、「自分軸」で生きていけるようになった…ということだと思います。

これはなにも「年金生活」に限った話しではなく、多くのものごとに活かせそうです。

他人と比べるのをやめ、「今」の自分に「何ができるのか」「どうしたいのか」を考え、行動を起こしていくことで、しなやかな「自分軸」を作っていきたいと思いました。

老後に必要なものはお金だけではない

 人はいきなり「老後」や年金生活に突入するのではなく、老後はそれまでの生活を反映したものです。それまでどんなふうに生き、どんなふうに物事をとらえ考えてきたのか、お金のあるなしがその人の老後を豊かにしたり、貧しくしたりするわけではないと思います。 人との付き合い、趣味、生活習慣、健康……老後の生活もその前の生活と同じような大切な要素でできています。ただ重きをおくところと置かないところの割合が、これまでとは違うだけです。

紫苑著『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』大和書房(2022)

生活をしていく上でお金は大切です。

ですが、お金だけはたくさん持っているけれど、夢中になれる趣味もなく、頼れる友人や親族もいなくて、健康状態が不安定では「幸せな老後」とは言いがたいですよね。

著者の言葉にもある通り、直接的に “お金のあるなしがその人の老後を豊かにしたり、貧しくしたりするわけではない” と思います。

そうなると、老後以前の生活を楽しむこと、自分が心から楽しめる趣味を見つけたり、人間関係を育てたりすることは、今からできる「老後の備え」になるのかもしれません。

著者は、”いろいろなことをしたという経験は逆に今の生活の支えになっています”とも語っています。

おわりに

今回は、紫苑著『71歳、年金5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』をご紹介しました。

この記事では、著者の「考え方」を中心に取り上げましたが、

  • 4日分1000円で食材の買い出し
  • 世界一安い「コム デ ギャルソン」
  • 画用紙で作った10円ランプシェード

などなど、具体的な節約ノウハウもびっくり&おもしろいです。

エッセイのような感じで、気になるところから気軽に読めるのも本書のいいところだと思います。

興味を持った方は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

この記事が何かお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

プロフィール
ひなた

・2児を育てる30代ワーママ
・理想の生き方を模索中
 年間読書量:90冊
 ※Audibleでの【耳読書】含む

ブログ『ひなたの本棚』では、
今よりもちょっと理想の生き方へ
をコンセプトに、生き方や働き方
に迷うあなたに役立つ本をご紹介
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