熊谷徹さんが書かれた『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』をご紹介します。
本書はドイツ人の暮らしや価値観から、本当に「豊か」な生活とは?「ゆとり」のある社会とは?を考えさせてくれる作品です。
キーワードは「過剰サービス」と「お金に振り回されない生き方」。
『ドイツ人はなぜ、年290万でも生活が「豊か」なのか』は次の方にオススメです。
- 日々忙しく「ゆとり」がない
- 「豊か」な生活に憧れるけど、半ばあきらめている
- 日本の便利さ・手厚いサービスの裏側を今まで考えたことがない
日本では「お客さんは、こういうことを求めているはず」と先回りして考え、痒いところに手が届くサービスが求められるけど、
これって、本当にいいことばかりなのでしょうか?
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『ドイツ人はなぜ、年290万円でも生活が「豊か」なのか』基本情報
基本情報
- 著者:熊谷 徹(くまがい とおる)
- 出版社:青春出版社
- 発行日:2019年2月15日
- 項数:187頁
著者紹介
熊谷 徹(くまがい とおる):
1959年東京生まれ。大学卒業後、NHKに入局。
90年代からフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在中。
統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆をつづけている。
X (twitter):https://twitter.com/ToruKumagai?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
手取り290万でも余裕がある?
2018年の統計では、ドイツ市民一人当たりの年間手取り額は、日本円で約290万円。
けっして余裕があるとはいえない水準です。
ドイツにも富裕層はいますが、一方で年収105万円に満たない人が11%もいて、格差が広がっています。
それでも、29年間ドイツで暮らしてきた著者は、
“ドイツ社会を全体として見ると、日本に比べて「ゆとり」があるように見える。”
と言います。
実際に「自分の生活に満足していますか?」というアンケートでは、93%の人が「非常に or かなり満足している」と答えています。
決して手取りが多いわけではないのに、満足度の高い生活ができるのはなぜでしょうか?
ドイツ人の「豊か」な生活とは?
ドイツ人の「豊か」な生活とは?
その具体的な生活ぶりはこんな感じです。
お金を使わない「質素」な暮らし
ドイツ人は服装に無頓着な人が多く、大手企業でもポロシャツにジーンズ、スニーカーで働く人がいます。
スーツの肘の部分が薄くなっても、布で補強して着続けている人も珍しくないのだとか。
食事も質素で、夕食では火を使った料理はせず、パンやハム、チーズだけで済ませます。
レストランで外食をする頻度も少なく、贈り物を贈り合うこともあまりしません。
おしゃれにも食事にも極力お金を使わず、プレゼントもしない。
よく言えば「質素」「倹約家」ですが、「ケチ」ともとれるドイツ人の生活。
これが本当に「豊か」なのか?と思いつつ、休暇の過ごし方をみていきます。
休暇はゆっくりのんびり
ドイツ人は、余暇にもあまりお金をかけません。
サイクリングをしたり、森で散歩をしたり、公園や自宅のベランダで日光浴しながら読書をする人が多いです。
日頃の疲れを癒すために、ゆっくりのんびり過ごすのです。
まとまった休暇の過ごし方も日本とは対照的で、一か所に長期滞在が主流。
プールサイドや浜辺に寝ころんで日光浴をして、たまに読書や泳いだりする以外は何もせずにバカンスを楽しみます。
日本人だとこれでもかと予定を詰め込んで疲れてしまいがちですよね。
ドイツ人は基本的にあくせくせず、お金をかけずに生活を営んだり、余暇を楽しんだりすることに長けているのです。
「豊か」な生活を支えているのは?
こうしたドイツの「豊か」な生活を支えるものはなんでしょうか?
いろいろな要素がありますが、大きくは法制度と「他人に期待しない」マインドです。
労働者を守る厳しい法制度
ドイツには「開店法」とう法律があります。
この法律では、日曜日と祝日の営業は原則として禁止です。20時から翌朝6時まではお店を開けることもできません。
この法律によって、従業員は日曜日や夜間に働かなくてすみます。
また、「6か月の平均労働時間は8時間以下、1日10時間を超える労働は禁止」とする法律や、
「社員に毎年24日間の有給休暇を与えなくてはならない」とする法律など、
ドイツでは、労働者を過剰労働から守るような法律が日本に比べて整っています。
接客サービスの悪さ = 他人に期待しないマインド?
多くの日本人がドイツを訪れて驚かされるのは、接客サービスの悪さです。
著者は居酒屋に行ったとき、店員からコースターを手裏剣のように投げられたことがあるそう。
クレームが起きないのか?
と不思議に思いますが、ドイツではこんなことが日常茶飯事。
そもそも客として良質なサービスを受けようと期待していないのです。
(前略) サービスに対する期待度を下げてしまえば、サービスが悪くてもあまり不快に思わない。「自分はお客様なのだから、良いサービスを受けて当たり前だ」と思い込んでいると、サービスが悪いと頭に来る。
お客さんからサービスを期待されていなければ、働き手になった場合のプレッシャー・負担も相当少なくなるでしょう。
さらに、基本的に自分でできることは自分でして他人を頼りません。
DIYもお手の物、中には簡単な小屋を自力で建ててしまう強者もいます。
こうした「他人に期待しない」マインドが、人々の中で前提になっているのです。
「ゆとり」のある社会への第一歩とは?
このようなドイツ人の生活・考え方から、より豊かでゆとりのある社会・生き方のヒントを探ります。
過剰サービスをなくそう
私は毎年日本とドイツを行き来する間に、「日本のおもてなしは客にとっては素晴らしいことだが、サービスを提供する側にとっては、過重な負担になっているのではないか。日本の店員や郵便局員の労働条件は、サービスの手抜きをしているドイツよりも、悪くなっているのではないか」という思いを持つようになってきた。
法律を変えることは一個人では難しいですが、今すぐにでも変えられるのものもあります。
それは、客の立場になった時にサービスに期待しすぎる「甘え」をなくすことです。
カスハラ(カスタマーハラスメント)なんて言葉ができるのも、この「甘え」が過剰になったからではないでしょうか。
いい意味で「他人に期待しない」ことには多くの利点があります。
過剰なサービスを提供する必要がなければ、労働者の負担も少なくなるし、企業側もコストが削減できるので、その分商品やサービスの価格も割安にできるのです。
長い道程のスタート地点は、自分でできることは他人に頼らず、期待度と甘えを減らして過剰なまでに手厚いサービスを求めないことだ。さらに客である自分にサービスをしてくれる店員たちも家庭やプライベートな生活を持っているということを、意識することも重要だ。
金銭でははかれない価値を見直そう
ドイツでは「新しい通貨は自由時間だ」という考え方が広まりつつあります。
給料を稼ぐために多くの時間を労働にささげるよりも、趣味、自然との触れ合い、家族との時間が充分にとれることを重視する考え方です。
金銭では測れない価値 ― “心のゆとりや社会への貢献度、周囲の人々との関係” を見直すことは、
本当に「豊か」な生活とは何なのか?
を考えてみるきっかけになるのではないでしょうか。
おわりに
長らく日本に暮らしていると、高水準なサービスを受けているという自覚がなく、それを当たり前だと思ってしまいがちです。
働き手に対する「過剰な期待」が労働条件を悪くし、それが回り回って社会全体の「ゆとりのなさ」に繋がっているのでは?
という本書の指摘には、考えさせられました。
この記事では紹介しきれませんでしたが、本書には「ドイツ人のエコロジーへの意識の高さ」や「生産性の高い働き方」などについても書かれていて、興味深く読めました。
興味を持っていただけた方は、ぜひ本書を手にとってみて下さい。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
【熊谷徹さんの書籍】
・『ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか』
・『ドイツ人はなぜ、年収アップと環境対策を両立できるのか』
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