スティーブン・R・コヴィー著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』をご紹介します。
本書は1989年 (日本では1996年) の発行以来、全世界で4000万部を売り上げる大ベストセラー。
書店では自己啓発・ビジネス書のコーナーに置いてあることが多いですが、著者の実体験や多くの文献に裏付けられた「人生哲学」とも思える内容です。
人生を根本から変えていく「第1~7の習慣」を、ステップを踏むように身に着けていける構成になっています。
『7つの習慣』は、次のような方におすすめです。
- 一度きりの人生を充実させたい
- あの人さえいなければ…、環境さえ違えば…と思ってしまうことがある
- なんとかして今の自分を変えたい
「ひなたの本棚」では、全4回に渡り『7つの習慣』を深掘りしていきたいと思います。
- 第1回 『パラダイムシフトと原則』
- 第2回 第1~2の習慣
- 第3回 第3~5の習慣
- 第4回 第6~7の習慣
第1回であるこの記事では、『パラダイムシフトと原則』について分かりやすく解説していきます。
【忙しいあなたへ プロのナレーターによる本の朗読アプリ 「Audible」もおすすめ
※30日間無料体験期間中に解約することもできます。詳しくは上のボタンから公式ホームページへ。
『7つの習慣』の基本情報
基本情報
- 著者 :スティーブン・R・コヴィー
- 出版社 :キングベアー出版
- 発行日 :2013年8月30日
- 項数 :521頁
※初版発行:1989年8月15日
著者紹介:スティーブン・R・コヴィー
自分の運命を自分で切り開くための奥深いアドバイスを分かりやすく教えることに生涯を捧げ、タイム誌が選ぶ世界でもっとも影響力のあるアメリカ人25人の一人に選ばれている。国際的に高く評価されるリーダーシップ論の権威、家族問題のエキスパート、教育者、組織コンサルタントとして活躍した。(中略) 2012年7月、79年の生涯を閉じた。
『7つの習慣』はこんな本
第1~7の習慣は、大きく次の3つのパートに分かれています。
- 第1~3の習慣「私的成功」
- 第4~6の習慣「公的成功」
- 第7の習慣「最新再生」
他力本願ともいえる「依存」状態から「自立」し(私的成功)、
「自立」した人間同士が「相互依存」することで、より高い効果を作り出す(相互依存)。
そして、これらを実現するために、肉体・精神・知性などをバランスよく鍛える (最新再生) 習慣を身に着けることの重要性が説かれています。
それぞれの習慣の内容はかなり深く、世界中の人々に読み継がれているのも納得です。
しかしこの作品、500ページ以上もある超大作のため、通読しようとするとかなりの時間と労力が掛かります。
そこで、まずは解説本を読んでみるのもおすすめです。
『13歳から分かる!7つの習慣 自分を変えるレッスン』は、「7つの習慣」のエッセンスが、分かりやすい表現でコンパクトにまとめられています。
『まんがで分かる 7つの習慣』も、エピソードによって本書の内容が抵抗感なく頭に入ってくると思います。
・13歳から分かる! 7つの習慣 自分を変えるレッスン
・ 小山鹿梨子著『まんがでわかる7つの習慣』
パラダイムシフト ―私たちは、あるがままの世界を見ている
次の場面を想像してみてください。
二人の人物が、遠くにある図形を見ています。一人はそれをみて「これは、丸だ」と言い張り、
もう一人は「いや、これはどう見ても三角形だ」と譲りません。
同じ図形を見ているはずなのに、なぜ意見が合わないのでしょうか?
……実はこの図形、平面ではなく立体 、2人は別々の場所から「円錐」を見ていた…というオチです。
このように、まったく同じモノ・出来事でも、どの角度から、どういった視点で見るかによって、まったく違った形に見えることがあります。
これは、私達の日常を取り巻く様々なレベルの出来事に当てはまると思います。
本書では、だまし絵を使った認知実験を例にしてそれを説明します。
一方のグループには「若い女性」の絵を見せ、もう一方のグループには「老婆」の絵を10秒間だけ見せた後、「2つの絵を合成した絵」を「何に見えるか?」と問いました。
すると、先に「若い女性」の絵を見せられたグループは、大多数が「若い女性」に見えると答え、逆に「老婆」を見せられたグループは「老婆」に見えると答えました。
まず、経験による条件づけが、私たちのものの見方(パラダイム)に強い影響を与えていることが分かる。(中略) 家庭、学校、教会、職場、友人関係、職業団体、そして個人主義などの社会通念等々、私たちの生活には多くの影響力が作用している。そのすべてが無意識のうちに私たちに影響を与え、私たちの頭の中の地図、ものの見方、すなわちパラダイムを形成しているのである。
ものの見方は、経験やその人が暮らす社会の影響を強く受けます。
著者はさらに、こう続けます。
私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく、私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件付けされた世界を見ているのである。
つまり、私たちは自分を取り巻く世界を、自分のパラダイム(ものの見方)でもって、自分の見たいように見ている。
“自分自身の経験のレンズ”を通して世界を見ていると言うのです。
相手と意見が合わないと、瞬間的に相手が間違っていると思うのは、自分のパラダイムが正しいと無意識に信じているからです。
自分の頭の中にある地図、思い込み、つまり基本的なパラダイムと、それによって受ける影響の程度を自覚し、理解するほど、自分のパラダイムに対して責任を持てるようになる。自分のパラダイムを見つめ、現実に擦り合わせ、他の人の意見に耳を傾け、その人のパラダイムを受け入れる。その結果、はるかに客観的で、より大きな絵が見えてくるのである。
自分のパラダイムとはまったく違った見方ができるようになった時、それを「パラダイムシフト」と呼びます。
自分自身に大きな変化を望むのであれば、自分の思考や行動の土台とっているパラダイムを見直し、変えていく必要があるのです。
インサイド・アウト ―変化を望むなら、自分から
後輩の失礼な態度が気に障る、夫が家事を手伝ってくれない、子どもが言うことを聞かない…など、誰しも誰かや何かに不満を持ってしまうことはあるでしょう。
でも、こんなときに
「あの人とは馬が合わない」
「もっと、こうしてくれればいいのに」
とグチをこぼしたところで、その場はちょっとスッキリするかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。
ではどうすればいいのか?
著者は「インサイド・アウト」すべては自分からだといいます。
インサイド・アウトとは、一言で言えば、自分自身の内面から始めるという意味である。内面のもっと奥深くにあるパラダイム、人格、動機を見つめることから始めるのである。
逆に、「アウトサイド・イン」は、「あなた (周りの環境) が変わってくれれば、自分は変わる」という受け身の姿勢です。
私たちは、自分にとって不都合な状況を他人や環境のせいにしがちなところがあります。
うまくいかない原因の一部は、確かに「他人」「環境」「時代」といった外部要因にあるのかもしれません。
でも、相手に変わって欲しい、環境さえ違えばと願ってもおそらく何も変わりません。
相手の言動や周りの環境は、自分の意思でコントロールできないからです。
何かを変えたいと願うなら、まずは自分自身から変化を起こしていく必要があります。
そうは言っても、
「相手が悪いのに、自分の方が変わらなければいけないのは納得できない」
と思われるかもしれません。
ですが、その「相手が悪い」という見方そのものが、自分にとって都合のいいものになっている可能性があります (先ほどのパラダイムの話しです)。
ここで「インサイド・アウト」の考え方をすることができれば、
「私のやり方にも、問題があったのかも…」
と、自分自身に原因を見出すことができるかもしれません。
そうしたら「伝え方を工夫してみよう」とか「まずは相手の話しをきちんと聴いてみよう」といった対応策が出てくるはずです。
ここで注意しておきたいことは、変えられるのは常に自分の行動だけで、結果をコントロールすることはできないという点です。
先の例で「相手の話しをきちんと聴こう」と態度を改めたとしても、それで状況が必ずしも好転するわけではありません。
それでも、何かを変えたいと思ったときに自分にできることは、常に自ら働きかけることなのです。
「原則」について
著者は、社会的なイメージを作ったり、テクニックによって人間関係を円滑にしたりすることで、成功しようとする考えを「個性主義」と呼び、
反対に、公正、誠実、正直、人間の尊厳、奉仕や貢献といった、人間の不変の「原則」に基づく優れた人格の養成を重視する考えを、「人格主義」と呼びました。
公正とか誠実なんて言われると、道徳的な規範を押し付けられるようで、拒絶反応が出てしまう方もいるかもしれませんが、著者は次のように述べています。
(前略) たとえ公正とはまるで正反対の経験をしても、人が公正さの感覚を生まれながらに持っていることは小さな子の行動を見ればわかる。公正の定義や、公正さを実現するプロセスに大きな違いがあっても、時代や地域に関わらず、公正という概念そのものは誰もが理解できる。
「原則」とはもともと私たちの内面に備わっている「良心」とも言い換えられるかもしれません。
その上で、その対極にある「個性主義」を次のように批判します。
個性主義のテクニックや応急処置的な手法で成功を手に入れようとするのは、デトロイトの地図でシカゴのどこかを目指すのと大差ない。
著者は、すべての生命には「成長と発達のしかるべき順番」があり、能力開発にも同じことが言えるといいます。
子どもは寝返りができるようになってはじめて、お座りやハイハイができるようになりますし、ピアノを習い始めたばかりなのに、リサイタルを催すことには無理があります。
物理的な現象であれば、誰もがプロセスの原則を理解し、受け入れています。
ですが、これが「情緒」「人間関係」「人格」となってくると、簡単には納得できなくなってしまうのです。
ですが、これらも「自然のプロセス」を無視して近道できるものではありません。
初めて会う人や同僚に対してであれば、格好をつけ、それらしく振舞うことができる。できる振りをすることも可能だ。(中略) しかしほとんどの人は本当の自分を知っているものだし、一緒に暮らしている人や職場の同僚なら、真実の姿に気づく。
著者は、さまざまな問題は結局のところ、個性主義的に生き、人間関係を築いてきた結果だと言います。
『7つの習慣』では、
- 人間の原則を中心に据え
- 人格を土台にしたインサイド・アウト(全ては自分から)のアプローチによって
- 個人の成長や価値ある人間関係を実現する
「人格主義」のアプローチについて語られています。
おわりに
スティーブン・R・コヴィー著『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』の中から、『パラダイムシフトと原則』について解説しました。
私たちは、自分の考え方が絶対だと思ってしまいがちですが、それはあくまで「自分自身が条件づけされた世界をみている」という指摘には、ハッとさせられました。
以降はこの記事の内容を踏まえて、
- 第2回 第1~2の習慣
- 第3回 第3~5の習慣
- 第4回 第6~7の習慣
について解説していきたいと思います。
興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。
この記事が、なにか少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうござました。
【『7つの習慣』に関連する書籍】
・13歳から分かる! 7つの習慣 自分を変えるレッスン
・ 小山鹿梨子著『まんがでわかる7つの習慣』
<スポンサーリンク>
<スポンサーリンク>
コメント