『さみしい夜にはペンを持て』書くことで、自分と対話する

自己理解

明けない夜はない。ひとりぼっちの夜をくぐり抜け、朝を迎えに行くんだ。朝は、きみを待っている。だから、さぁ―

古河史健さんが書かれた『さみしい夜にはペンを持て』をご紹介します。

古賀さんといえば、岸見一郎さんとの共著『嫌われる勇気』を手掛けた実力派ライターですが、本書は、作文やレポートを上手に書くための本ではなく、

❝ 書くことを通じて自分と対話し、自分を受け入れ、みずからの生を肯定していく本 ❞ です。

中学生に向けた本ではありますが、人生に迷える大人にも読んでもらいたい作品です。

―書くことは考えること―

どういうことなのか? 詳しくみていきます。

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『さみしい夜にはペンを持て』の基本情報

基本情報

  • 著者 :古河史健
  • 絵  :ならの
  • 出版社:株式会社ポプラ社
  • 出版日:2023年7月18日
  • 項数 :289頁

著者紹介:古河史健

ライター。1973年福岡県生まれ。1998年、出版社勤務を経て独立。主な著書に『取材・執筆・推敲』『20歳の自分に受けさせたい文章講義』のほか、世界40以上の国と地域、言語で翻訳され世界的ベストセラーとなった『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(岸見一郎共著)、(中略) などがある。

『さみしい夜にはペンを持て』のあらすじ

https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008431.html

舞台は海の中。

うみのなか中学校3年生の「タコジロー」と「ヤドカリのおじさん」との対話を中心に物語が展開します。

学校でいじめられていること、「たこ」に生まれてしまったこと、母親との関係などに悩むタコジローに、ヤドカリのおじさんはそっと寄り添いながら、

「書くこと」とは何か?

について時間をかけて対話した上で、日記を書いてみることを勧めます。

半信半疑だったタコジローですが、ひとまずおじさんの言う通り書いてみることに。

おじさんと話したこと、学校での出来事や感じたこと…

毎日、日記を書いていくことで、見えてきたものとは?

書くことは考えること?

「書くことは考えること?」

「そう。考えることは書くことだと言っても、かまわない」

おじさんは、書くことではじめて、考えることができると言います。

頭の中がモヤモヤ・ぐちゃぐちゃする時は、言葉未満の泡 つまり言葉にならない「思い」が頭の中いっぱいになって、白く靄がかかっているような状態です。

「言葉未満の泡」にしっかりと輪郭を与え、言葉にして吐き出すことで頭の中が掃除され、スッキリします。

誰かに話すだけでちょっと心が軽くなったりするのはこのためです。

でも、これだけだと「考えている」 とは言えません。

「考える」と「思う」の違いは、答えを出そうとするかどうか

算数の問題を解こうとする時、頭の中で暗算すると難しいですが、紙に書いてみると簡単に解くことができます。

何か物事について考える時も、書いてみることで、問題が解きやすくなるのです。

自分の言葉で書いて「いや、こうじゃない」と何回も書き直す作業を経て、これ以上消しゴムが入らないところまで辿りついた着いた時、 そこには現時点での自分の答え=考えが財産として残ります。

これが実は、書くことのひとつの効用です。

思うように書けない…

書くことで、考えていく…。

頭の中の 「言葉未満の泡」を掃き出し整理していく。

なんとなく分かるけど、実際に文章を書こうとすると、自分の思いとは全然違う文章になってしまう…

こんな苦手意識を持っている方も多いと思います。

同じように感じているタコジローに、おじさんは次のように言います。

(前略) 「もちろんさ。タコジローくんは、文章を書くのが苦手なわけじゃない。ただ、ことばを決めるのが早すぎる。手っ取り早く、便利なことばで片づけている。ことばを探す面倒くささに、屈している。おかげで、自分の気持ちから離れた文章になっている。それだけのことさ」

物語の中では、買い物に例えてこのことが説明されます。

どこか遠くから光が投射され、目の前にたくさんのお菓子が映し出されました。

おじさんは、タコジローにしっかりと考えて、ひとつだけ今日のおやつを選ぶように言います。

全体を眺めて、タコジローはいつも食べているこんぶチップスを選びました。

そこで、おじさんはこう言います。

「タコジローくん。このおおきな棚には、40種類以上のお菓子がある。スナック菓子、チョコレート、ビスケット、キャンディ、それからグミまで。タコジローくんはたぶん、ぜんぶ見ることをしないまま、なんとなく『いつものこんぶチップス』を選んだんじゃないかな?(中略) 「それはほんとうに『選んだ』と言えるのかな? それで『考えた』と言えるのかな?」

実は、私たちが文章を書くときにも同じことが起こっています。

よく考えもせずに安易にいつも使っている言葉、なんにでも使える便利な言葉を選んでしまうことで、言いたいことから、かけ離れた文章になっているのです。

言葉を選ぶのが早すぎる

まずはじっくりと時間をかけて、自分の思いにフィットする言葉を探すことで、自分との対話が深まっていきます。

あのときの自分の気持ちをスケッチする 

書くことができなくなる理由の一つは、『今の気持ち』を書こうとすることです。

おじさんは、『いま』という瞬間は時計の針のように、どんどん更新されていくもので、『いまの気持ち』も毎秒のように更新されていくから、とても追いかけきれるものではないと言います。

では、どうすればいいのか?

更新されることのない、『あのときの気持ち』を書くのです。

「じゃあ、おじさんが言ってた『自分との対話』ってやつは、『あのときの自分』と対話するってことなの?」 「そうだ。あのとき、自分はどこにいて、なにを見ていたのか。どんなことを感じて、なにを思っていたのか。書いては消し、消しては書き、ペンと消しゴムの両方を使って、『あのときの自分』と対話していく。より正確に、スケッチしていく。そうやってダンジョンの奥深くへと進んでいくんだ」

『あのときの自分』を思い出すことが難しければ、具体的に「見ていたもの」「聞こえてきた音」などを思い出してみます。

すると、不思議とだんだん前後の記憶もよみがえってきます。

さらに、『あのときの自分』にインタビューしてみましょう。

例えば、誰かと一緒にいて、なんとなくイライラしてしまった時、

  • どうしてイライラしているの?
  • 誰かに、何か言われたの?
  • 気に障ることを言われたわけではないなら、別のことでイライラしているの?
  • その人の、どこにイライラしているの?
  • その時その人は、どんな態度、どんな表情だったの?

といった具合に、どんどんと質問を重ねていきます。

そうすると、実は「ぎこちない関係性になっている」ことが問題で、その人自体が悪いわけではない…と、本当の原因に気付いたりします。

このように、『あの時の自分』にインタビューすることで、少しずつ答えに近づいていくのです。

おわりに

古河史健さんが書かれた『さみしい夜にはペンを持て』をご紹介しました。

ヤドカリのおじさんは、日記を書き続けるこで気づいたことがあると言います。

書くのは自分のことを『わかってほしいから』、そして一番『わかってほしい』と思っている相手は自分自身だったと。

本書は、単純に物語としても面白いですし、人生の指南書的な読み方もできる、かなり多面的な作品です。

ならのさんのかわいい挿絵も、物語の理解を助けてくれます。

興味を持った方は、ぜひ本書を実際に手にとってみてください。

この記事がなにかお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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【古河史健さんの書籍】

・20歳の自分に受けさせたい文章講義

・嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え ※岸見一郎さんとの共著

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プロフィール
ひなた

・2児を育てる30代ワーママ
・理想の生き方を模索中
 年間読書量:90冊
 ※Audibleでの【耳読書】含む

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