今回は、ちきりん著『自分の時間を取り戻そう―ゆとりも成功も手にいれられるたった1つの考え方』という本をご紹介します。
この作品は「時間」の捉え方や使い方を根本から見直すためのキーワード「生産性」について書かれた本です。
著者は、米国での大学院留学、外資系企業勤務という経歴を持つ社会派ブロガーであり、書籍も数多く出版しています。
そのグローバルな視点、かつ合理的な指摘にはいつも勉強させられます。
- とにかく忙しい今の生活をなんとかしたい
- 今の生活が後何十年も続くかと思うと暗い気持ちになる
- メリハリをつけた時間の使い方ができるようになりたい
という方にぜひお勧めしたい1冊です。
今回は本書の要点に絞って解説していきたいと思います。
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「生産性」とは:アウトプット/インプット
序章では性別も立場も異なる4人の忙しすぎる人たちを紹介した上で、共通する問題点を一つ指摘します。
それは「生産性が低すぎる」ことです。
本書でいう生産性とは、自分の欲しい結果をどれだけのインプット=希少資源(時間/お金/労力)で得たかという指標であり、下の式のように表されます。
・生産性の計算方法(定義)
生産性=得られた成果/投入した希少資源=アウトプット/インプット
ちきりん『自分の時間を取り戻そう―ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方』ダイヤモンド社(2016年)
人によって、あるいは人生のどの段階にいるかによって「より希少な資源」は異なります。著者の海外旅行の例でいえば…
- 学生時代:お金が希少。時間が掛かっても格安航空機を乗り継いで欧州旅行。
- 今:時間が希少。手数料やサービス料を払ってでも時間を節約したい。
といった具合です。
「時間」は有限感を持ちにくい希少資源
「より希少な資源」は人によって違うとはいうものの、多くの人は「時間」よりも「お金」を大切にしがちです。
それは、「時間」という希少資源が「有限感」、つまり「限りがあるものだという感覚」を持ちにくいからです。
お金であれば貯金残高がいくら残っているのか、いくら使ったのかが目に見えるため、私たちはなるべく無駄遣いしないよう大切に扱います。
しかし、時間に関しては「どれだけ使ったか」を視覚化することが難しいため、本当は時間の希少価値が高い場合でも、それを意識しづらいのです。
そのため、本書では希少資源の中でも特に「時間」の生産性をあげるための考え方・具体策に多くのページが割かれています。
生産性を高めて、よりゆとりのある生活を手に入れよう
本書では、
- 仕事の生産性を高めて、労働市場における自分の価値をあげること
- 日常生活を含めた生産性を高めて、限られた自分の大切な時間を、本当にやりたいことのために使うこと
を提案しています。
こうきくと何か高い目標に向かって、ストイックに物事を極める人 (プロスポーツ選手や敏腕経営者) を思い浮かべるかもしれませんが、「集中度」=「時間を一つのことに集中投下するかバランスよく配分するか」と生産性はまた別の話です。
著者は、ふつうの人に関しては
「それほど高い目標は持たず (家族がみんな元気であればいい程度)、豊かでメリハリのある生活」
を目指ざすと良いのではないかと言っています。
仕事はしっかりと成果を出しつつ定時で終わらせ、家に帰った後は家族とのんびり、あるいは趣味に没頭できるのというのは確かに豊かな生活ですよね。
生産性を高めるためには「時間」を減らす
先に紹介したように生産性は、
“生産性=得られた成果/投入した希少資源=アウトプット/インプット”
という式で表されます。ですので、生産性を高めたいと思ったら、
- かける時間を短くして、同じ成果を出す
- 掛ける時間は同じで、より大きな成果を出す
の大きく2つのパターンが考えられます。
そこで、まず「仕事にかける時間を減らす」ことが提案されています。
成果を出すために残業することは生産性を下げてしまうことが多く、いずれは無理がくるためアウトだそうです。
仕事に掛ける時間を短くして、今までと同じかそれ以上の成果を出すために、
- 一日の総労働時間を制限する
- 業務ごとの投入時間を決める
- 忙しくなる前に休暇の予定をたてる
- 余裕時間をたくさん確保しておく
- 仕事以外のこともスケジュール表に書き込む
といった具体策が紹介されていました。
生産性を高めるために、「時間を減らすこと」と同じくらい有効なのが「すべてをやろうとしない」ことです。
超多忙なワーキングマザーA子の例では、必ずしもA子がやらなくてもよい家事
…日用品の買い出し、弁当作り、週末の常備菜づくり、水回りの掃除…
などを、お金を支払って外注化していきます。かける時間を「ゼロ」にしたのです。
今の自分 (A子) にとって希少な資源が「時間」だと気づいたことで「家事代行サービスを利用する」という選択ができ、時間の余裕が生まれました。
高生産性社会に生きる意味
「個人としての生産性を高めてゆとりのある生活を手に入れること」の他にもう一つ、本書では生産性を切り口とした世の中の捉え方、「高生産性社会に生きる意味」についても書かれています。
こちらも、とても勉強になる内容でした。
タクシーとUber(ウーバー)〔アメリカで誕生した配車サービス〕の例が印象的だったのでご紹介します。
タクシーは、お客が来るまでずっと車の中で待機していなければならず、その間はなにも利益を生まないという、非常に生産性が低いビジネスモデルです。
一方Uberは、個人が自分の空いている時間に自家用車で乗客を運び、乗車賃を得るというサービスです。
今まで、有効活用されずに放置されていた「個人と自家用車の空き時間」が生かされることで、タクシーに比べて圧倒的に高い生産性を可能にしています。
これからは、人々の希少資源 (時間やお金) を有効活用できるような仕組みやサービスが生き残っていき、生産性の低いやり方は淘汰されていくといいます。
「高生産性社会に生きている」ということを意識できると、世の中がこれからどのように変わっていくか、その傾向を理解しやすくなりそうです。
まとめ
今回は、ちきちん著『自分の時間を取り戻そう―ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方』という本を紹介しました。
何かと忙しい毎日の中で何とか「やるべきこと」をこなそうと奮闘するも、うまくいかない…。
そんなとき、今までの時間の使い方を「生産性」という切り口で見返してみるのは新鮮でした。
ちなみに『自分の時間を取り戻そう』は、シリーズ作品となっており、同シリーズの『自分のアタマで考えよう』『マーケット感覚を身につけよう』もとても面白く読めました。
興味を持っていただけた方は、ぜひ実際に本書を手に取ってみてください。
この記事が何か少しでもお役に立てれば嬉しいです。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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